貞操権の侵害で慰謝料を請求できるケース

独身だと言っていた交際相手が実は既婚者だということが分かり、既婚者であることを隠していた相手方に慰謝料を請求したいというご相談をよく受けます。

このように、交際相手から既婚であることを隠され、肉体関係を持ってしまった場合には、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求することができることがあります。

そこで、今回は、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求できるケースはどのような場合なのかを北九州・小倉の弁護士が解説いたします。

貞操権とは、性的自由に不当な干渉を受けない権利のことをいいます。では、どのような場合に貞操権を侵害されたといえるでしょうか。

1 隠されたことにより既婚者であることを知らなかった場合

貞操権侵害といえるためには、相手方に結婚する気がないにもかかわらず、結婚すると偽られたことにより、それを信じてしまい、相手方と肉体関係を持ったことが必要です。

このように、貞操権侵害といえるためには、結婚していることを隠していた、秘密にしていたという事情だけでは足りず、積極的に結婚するつもりであると騙していたという事情が必要となります。

2 既婚者であることは知っていたが、別居している、離婚すると言われていた場合

それでは、交際相手が既婚者であると知っていたが、実際は別居も離婚もする気がないにもかかわらず、別居している、離婚する予定だと交際相手に偽られたことにより、それを信じてしまい、相手方と肉体関係を持ったときはどうでしょうか。

このような場合は、騙された方も相手方が既婚者であることを知っており、自身の行為が客観的には不貞行為になるという認識があるといえます。そうである以上、貞操権侵害が認められるためには、このような事情を考慮しても、既婚者が積極的に騙したような事情、騙されたことや交際を続けたことがやむを得ないという事情が必要になると考えられます。したがって、既婚であると知っていた場合の慰謝料請求は、知らなかった場合と比較して認められにくいものといえます。

3 交際相手の配偶者との関係

既婚者の交際相手と肉体関係を持ったことは、交際相手の配偶者との関係では、これが不貞行為に該当する可能性があるということになります。それでは、交際相手の配偶者との関係では不貞行為に該当するにもかかわらず、交際相手に対して貞操権侵害を理由に慰謝料を請求してもよいのでしょうか。

この問題について、昭和44年9月26日の最高裁の判決では、「女性側における動機に内在する不法の程度に比し、男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰藉料請求は、許される」と述べています。すなわち、自分より交際相手の違法性の程度が著しく大きいといえる場合には、貞操権侵害を理由に慰謝料請求をすることができるとしています。

隠されたことにより既婚者であることを知らなかった方の場合は、騙されていた以上、交際相手の違法性の方が著しく大きいとはいえ、慰謝料請求が認められる可能性があるといえます。

4 貞操権侵害を理由に慰謝料を請求できる具体例

以上からすると、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求することができるのは主に以下のような場合になると考えられます。

  • 交際相手(既婚者)が結婚していないとの虚偽の発言を行い、それを信じて交際を開始し、肉体関係をもった場合
  • 既婚者が参加、登録することができない結婚相談所、婚活パーティー、婚活アプリなどで知り合い、交際を開始し肉体関係をもったが、実は既婚者であった場合


以上のように、貞操権侵害については、法的に難しい問題が含まれているだけでなく、証拠についても、事案ごとに大きくことなってきます。既婚であると騙されて肉体関係をもってしまったが慰謝料を請求できるかわからない、慰謝料を請求したいが証拠が足りているのか、どのような証拠が必要なのかなどでお悩みの方は、まずは離婚・男女問題に注力する北九州・小倉の弁護士までお気軽にご相談下さい。

 

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