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はじめに:不倫と親権は「別の問題」です
「不倫をした配偶者が、子どもを育てるなど到底納得できない」
パートナーの裏切りに直面されたとき、このように思われるのは当然の感情です。お子様の将来を想うからこそ、その怒りや不安は計り知れないものでしょう。
しかし、家庭裁判所における親権者の判断は、皆様が抱く感情とは少し異なる視点で行われます。ここで最も重要な事実をお伝えします。それは、裁判所が「夫婦間の問題(不倫の有責性)」と「親子の問題(子の福祉)」を明確に切り離して判断するという原則です。
つまり、不倫という有責配偶者であるという事実そのものが、直ちに親権獲得の可否を決めるわけではないのです。
では、何を基準に親権者は決まるのでしょうか。その最大の鍵を握るのが、「これまでの監護実績(どちらが主として子どものお世話をしてきたか)」です。この記事では、不倫問題が絡む離婚において、裁判所がどのような基準で親権者を判断するのか、そして最も重要となる「監護実績」をどのように証明していくべきか、専門家の立場から詳しく解説してまいります。
裁判所が親権者を決める3つの重要基準
家庭裁判所が親権者を判断する際、その根底には常に「子の福祉」という最も重要な大原則があります。これは、夫婦どちらの都合を優先するのではなく、お子様が心身ともに健やかに成長できる環境はどちらか、という視点で判断することを意味します。この「子の福祉」を実現するため、裁判所は主に以下の3つの基準を総合的に考慮します。

最重要:主たる監護者・現状維持の原則
親権判断において、裁判所が最も重視するのが「監護の継続性(現状維持の原則)」です。これは、離婚という大きな変化に直面するお子様の負担を少しでも減らすため、できる限りこれまでの生活環境を維持すべきだという考え方に基づいています。
この原則のもとで鍵となるのが、これまでお子様の世話を主として担ってきた「主たる監護者」は誰か、という点です。具体的には、以下のような日常的な育児行為をどちらが中心となって行ってきたかが問われます。
- 食事の準備、食事の世話
- 入浴、着替え、寝かしつけ
- 保育園や学校の送迎、準備
- 病気や怪我の際の看病、病院への付き添い
- 学校行事や習い事への参加、関与
裁判所は、これらの「監護実績」を客観的な証拠に基づいて判断します。したがって、ご自身が主たる監護者であることを主張するためには、以下のような証拠を整理しておくことが極めて重要です。
- 母子健康手帳:健診や予防接種の記録は、誰が付き添っていたかを示す重要な証拠です。
- 保育園や学校の連絡帳・成績表:保護者からのコメント欄への記入や、面談の記録などが該当します。
- 病院の診察券や領収書:子どもの名前と共に保護者名が記載されている場合、有力な証拠となり得ます。
- 写真や動画:日常的な育児の様子がわかるものは、補助的な証拠として役立ちます。
監護環境と親の適格性
次に、離婚後にお子様が生活する環境が、心身の健全な発達に適しているかが考慮されます。これには、安定した住環境が確保されているか、祖父母など親族からのサポートが得られるか、そして親自身の心身が健康であるかといった点が総合的に判断されます。
不倫の事実がこの点で問題となるのは、例外的なケースです。例えば、「不倫相手との関係を優先して育児を放棄(ネグレクト)していた」「不倫相手が子どもに暴力を振るうなど、直接的に危害を加えた」といった事情があれば、親としての適格性が問われ、親権判断において著しく不利になる可能性があります。
経済力については、「収入が低いこと自体が、直ちに不利になるわけではない」という点を理解しておくことが重要です。収入に不安がある場合でも、直ちにそれだけで親権が不利になるとは限りません。離婚後は、もう一方の親に養育費の負担が生じ得ることに加え、公的支援や親族の協力なども含めて、子どもの生活が安定して維持できる体制を具体的に示すことが重要です。
子どもの意思の尊重
お子様の年齢に応じて、その意思も重要な判断材料となります。法律上、家庭裁判所は、子に大きな影響が及ぶ家事事件の手続では子どもの意見を把握し、年齢や発達の程度に応じて考慮すべきものとされています。とりわけ15歳以上の場合には、事件類型によっては子どもの意見を聴取する手続が明確に求められる場面があります。
また、実務上の感覚では、10歳前後のお子様であっても、家庭裁判所調査官がお子様と面談を行うなどして、その意向を慎重に確認することが多くあります。調査官は、専門的な知見から、お子様がどちらかの親に気兼ねしたり、誘導されたりすることなく、本心から話しているかを見極めようとします。もっとも、調停や裁判において、子どもの意思はあくまで判断基準の一つであり、それだけで親権者が決まるわけではないという点も理解しておく必要があります。
不倫と親権に関するよくあるご質問(Q&A)
ここでは、不倫が関係する親権問題において、皆様からよく寄せられるご質問に、Q&A形式でお答えします。

【不倫された側】妻が不倫。でも育児は妻がメインでした。親権は絶望的?
結論から申し上げますと、絶望的ではありません。しかし、厳しい戦いになることは事実です。
その理由は、先ほどからご説明している通り、裁判所が「主たる監護者」としての実績を最優先する傾向にあるためです。日中の育児を主に奥様が担っていた場合、その監護実績は非常に強い要素となります。
しかし、諦める必要はありません。親権を獲得するためには、具体的な戦略が重要になります。まず、お仕事をしながらでも、これまでいかにご自身が育児に関わってきたか(例えば、夜間や休日の育児分担、学校行事への積極的な参加など)を示す「監護実績」の証拠を丁寧に集めることが第一です。次に、離婚後の監護体制として、ご自身の親御様(お子様の祖父母)からの協力が得られるなど、具体的なサポート体制が整っていることを客観的に立証していく必要があります。ご自身の状況を冷静に分析し、適切な主張を行うことが道を開く鍵となります。こうした状況にある男性の離婚・親権に関する法律相談も多く承っております。
【不倫した側】親権者になった場合、相手から養育費はもらえますか?
はい、もらえます。
法的な根拠は明確です。それは、ご自身の不貞行為に対する慰謝料の支払い義務と、お子様を育てるための養育費は、法律上まったく別の問題だからです。
養育費は、親の有責性とは関係なく、あくまで「子どもの健やかな成長のために支払われるべき費用」であり、お子様自身の権利です。したがって、あなたが親権者としてお子様を監護・養育する以上、離れて暮らすもう一方の親に対して、その収入に応じた適正な養育費を請求する正当な権利があります。ご自身の有責性を理由に、お子様が受け取るべき養育費まで諦める必要は一切ありません。なお、不倫慰謝料と養育費は別の性質のものであり、養育費については、少なくとも一方当事者の意思だけで当然に相殺して減らせるものではない、という整理が一般的です。
親権獲得は「過去の証明」から始まります【北九州の皆様へ】
本記事で解説してきた通り、親権の判断は「どちらが悪いか」という非難の応酬ではなく、「どちらがこれまで子どもの世話をしてきたか」という客観的な事実に基づいて行われます。福岡家庭裁判所小倉支部などでの実務においても、この「子の福祉」という観点が揺らぐことはありません。
したがって、親権の獲得を目指す上で最も重要なことは、感情的に相手を責めることではなく、母子手帳、保育園や幼稚園の連絡帳、学校からの配布物、写真といった、これまでの育児を証明する「目に見える証拠」を整理し、ご自身の監護実績を冷静に証明することです。これらは、不倫の証拠とはまた別の、親権を争う上で不可欠な準備となります。
「これまでどちらが食事を作り、病院へ連れて行き、学校行事に参加していたか」――こうした細かな『監護実績』の積み重ねは、お電話や画面越しのやり取りでは到底把握しきれるものではありません。
当事務所では、お子様の将来に関わる重大な判断を誤らないため、お電話やオンラインでのご相談は承っておりません。必ず小倉北区の当事務所へ直接ご来所いただき、育児に関する記録を対面で一緒に確認しながら、親権獲得に向けて、事実関係と証拠に基づく、可能な限り説得的な主張立証の方針を一緒に組み立てます。
不倫をされた側の方には「相手の不倫を責めるだけでは親権は取れない」という現実を、不倫をした側の方には「不貞関係にお子様を巻き込むような行為があれば親権は厳しくなる」という現実を誠実にお伝えし、冷静な対応を促します。北九州市小倉北区、小倉南区、八幡西区、行橋市、中間市などで親権問題にお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
監修者情報
監修:弁護士 平井章悟(福岡県弁護士会所属/平井・柏﨑法律事務所)
最終更新日:2026年4月15日

平井・柏﨑法律事務所は、北九州市を中心に福岡県内の離婚・男女問題に特化した法律事務所です。
財産分与や慰謝料請求、親権、養育費など、複雑な法律問題を数多く解決してきた豊富な実績とノウハウが強みです。
特に、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案することで、不安な気持ちを和らげ、未来へ踏み出すお手伝いをいたします。
また、複数の男女弁護士が在籍しているため、ご希望に応じて話しやすい弁護士が担当することも可能です。
離婚や男女問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせください。
