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不倫慰謝料を請求できない?弁護士が解説する6つの典型例
「配偶者に不倫をされた。慰謝料を請求したいが、請求できないケースもあると聞き不安になっている」
「過去の不倫について、今からでも慰謝料を請求できるのだろうか」
パートナーの裏切りによって深い心の傷を負い、当然の権利として慰謝料を請求しようとお考えのことと思います。しかし、慰謝料請求は、必ずしも認められるとは限りません。特定の状況下では、請求が困難になったり、認められなくなったりするケースが存在するのです。
この記事では、離婚・男女問題に注力してきた弁護士が、不倫慰謝料を請求できなくなる代表的な6つのケースについて、法律の専門家の視点から具体的に解説します。
- 慰謝料請求の権利が時効で消滅している
- 不貞行為の前から夫婦関係が破綻していた
- 不貞行為の証拠が不十分である
- 不倫相手に故意・過失がなかった
- すでに十分な慰謝料を受け取っている
- 慰謝料を請求しないという合意(示談)がある
ご自身の状況がこれらのケースに当てはまるのではないかとご不安な方も、この記事を読み進めることで、ご自身の状況を客観的に把握し、次にとるべき行動を考えるための一助となるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
慰謝料請求の権利が時効で消滅している
不倫慰謝料を請求する権利には、「時効」という法律上の期限が定められています。この時効が完成してしまうと、たとえ不倫の事実が明らかであっても、相手方が「時効なので支払いません」と主張すれば、法的に慰謝料を請求する権利は失われてしまいます。この時効制度は、長期間にわたって不安定な法律関係を放置せず、社会の法的安定性を図るために設けられています。
不貞行為の前から夫婦関係が破綻していた
不倫慰謝料は、不貞行為によって「平穏な婚姻共同生活」という法的利益が侵害されたことに対する精神的苦痛を償うものです。したがって、不貞行為が始まる前から、すでに夫婦関係が修復不可能なほどに冷え切り、実質的に破綻していたと判断される場合には、守られるべき「平穏な婚姻共同生活」が存在しないため、慰謝料請求が認められない可能性があります。例えば、長期間の別居や離婚調停中であった場合などがこれに該当することがあります。
不貞行為の証拠が不十分である
慰謝料を請求するためには、配偶者と不倫相手との間に「肉体関係(性交渉またはそれに類する行為)」があったことを、請求する側が証拠に基づいて証明しなければなりません。単に「仲が良さそうだった」「二人きりで食事に行っていた」というだけでは不十分です。相手方が不貞行為の事実を否定した場合、客観的な証拠がなければ、裁判で請求を認めてもらうことは極めて困難になります。
【弁護士の視点】実務で多い証拠とその評価
離婚・不倫問題のご相談を数多くお受けする中で、LINEやSNSのやり取りを証拠としてお持ちになる方は非常に多くいらっしゃいます。確かに、「好きだよ」「早く会いたい」といったメッセージは不倫を推認させる一要素にはなります。しかし、それだけでは肉体関係の直接的な証明にはならず、「親密な関係ではあったが、肉体関係はなかった」と反論される余地が残ります。
実務上、慰謝料請求で特に重要となるのは、ラブホテルへの出入りを撮影した写真や動画、肉体関係があったことを明確に認める会話の録音、あるいは相手方自身が肉体関係を認めた念書など、より直接的な証拠です。職場の同僚との不倫など、証拠集めが難しいケースも少なくありません。どのような証拠が有効か、どうすれば集められるかについては、状況によって大きく異なるため、行動を起こす前に一度、専門家である弁護士にご相談いただくことを強くお勧めします。
不倫相手に故意・過失がなかった
不倫相手に対して慰謝料を請求するには、相手方に「故意」または「過失」があったことが必要です。つまり、①交際相手が既婚者であることを知っていた(故意)、または、②少し注意すれば既婚者だと気づけたはずなのに不注意で気づかなかった(過失)という事情がなければなりません。
例えば、相手が独身であると偽っていた場合や、夫婦関係が完全に終わっていると信じ込まされていたようなケースでは、不倫相手に故意・過失がなかったとして、慰謝料請求が認められない可能性があります。
すでに十分な慰謝料を受け取っている
不貞行為は、配偶者と不倫相手の二人が共同で行う「共同不法行為」です。そのため、被害者であるあなたは、どちらか一方または双方に対して、被った精神的苦痛の全額について慰謝料を請求できます。
しかし、例えば配偶者から既に慰謝料を受け取っている場合、裁判所はその既受領額を考慮して不倫相手への請求額を調整することがあります。事情によっては重複請求が制約されるため、具体的な可否および調整の可能性については個別に弁護士にご相談ください。
慰謝料を請求しないという合意(示談)がある
過去に不倫が発覚した際に、当事者間で「今後、慰謝料は請求しません」といった内容の示談書や合意書を取り交わしている場合、原則として、その合意の効力によって後から慰謝料を請求することはできません。ただし、その示談の後に再び不貞行為があった場合など、状況によっては新たな不法行為として別途慰謝料を請求できる可能性もあります。

【ケース1】慰謝料請求の「時効」に関する詳しい解説
慰謝料請求権の時効は、請求相手や状況によって起算点(時効期間のカウントが始まる時点)と期間が異なります。特に重要なのは「3年」と「20年」という2つの期間です。
不倫相手に対する慰謝料請求権の時効
- 原則:不倫の事実と不倫相手を知った時から3年
- 例外:不倫があった時から20年
配偶者に対する慰謝料請求権の時効
- 離婚しない場合:上記と同じ(不倫の事実と相手を知った時から3年)
- 離婚する場合:離婚が成立した時から3年
最も注意すべきは、不倫相手に対する請求の時効です。多くの場合、「不倫の事実」と「相手の素性(氏名や住所など)」の両方を知った時点から3年のカウントダウンが始まります。例えば、1年前に夫の不倫が発覚し、その時に相手の女性の氏名も判明したという場合、そこから3年が経過すると時効が完成してしまう可能性があります。
時効の完成を阻止する「更新」と「完成猶予」とは?
「時効が迫っているけれど、まだ話し合いがまとまらない…」そんな状況でも、諦める必要はありません。法的には、時効の完成を一時的にストップさせたり(完成猶予)、時効期間をリセットしたり(更新)する方法が用意されています。
| 方法 | 効果 | 具体例 |
|---|---|---|
| 裁判上の請求(訴訟提起など) | 完成猶予 → 更新 | 裁判所に慰謝料請求訴訟を提起する。訴訟手続き中は時効の完成が猶予され、判決が確定すれば時効はリセット(更新)され、そこから新たに10年の時効となる。 |
| 支払督促 | 完成猶予 | 簡易裁判所に支払督促を申し立てる。申立てが却下されるか取り下げられると、その時から6か月間、時効の完成が猶予される。 |
| 催告(内容証明郵便など) | 完成猶予 | 内容証明郵便で慰謝料の支払いを請求する。相手に到達した時から6か月間、時効の完成が猶予される。ただし、猶予期間中に裁判上の請求などを行う必要がある。 |
| 債務の承認 | 更新 | 相手方が「慰謝料を支払います」と認めたり、一部を支払ったりする。承認があった時点から、時効期間が新たにリセットされる。 |
特に実務でよく用いられるのが、内容証明郵便による「催告」です。これにより、時効完成を6か月間猶予してもらい、その間に交渉や訴訟の準備を進めることができます。どの方法が最適かは状況によりますので、時効が迫っている場合は、一刻も早く弁護士にご相談ください。
Q&A:10年前の不倫でも請求できる場合はありますか?
A. はい、請求できる可能性はあります。
10年前の不倫であっても、慰謝料請求を諦めるのはまだ早いかもしれません。以下のケースに当てはまる場合は、請求の可能性があります。
- 不倫の事実や相手を最近知った場合
前述のとおり、時効は原則として「不倫の事実と不倫相手を知った時から3年」です。例えば、10年前の不倫であっても、その事実をつい1か月前に知ったという場合は、そこから3年間は慰謝料を請求できる可能性があります。 - 不倫が継続していた場合
10年前に始まった不倫関係が、途切れることなく最近まで続いていた場合、一連の不法行為とみなされ、関係が終わった(または発覚した)時点から時効が進行すると考えられます。 - 除斥期間(20年)が経過していない場合
たとえ不倫の事実や相手を知らなかったとしても、「不貞行為があった時から20年」が経過すると、慰謝料請求権は完全に消滅します。逆に言えば、20年以内であれば、最近になって事実を知った場合に請求できる可能性があるということです。
過去の不倫に関する慰謝料請求は、時効の起算点の判断が非常に難しく、法的な専門知識が不可欠です。「もう無理だろう」とご自身で判断される前に、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

【ケース2】「夫婦関係の破綻」をめぐる裁判所の判断基準
不倫慰謝料請求において、「不貞行為の前から夫婦関係は破綻していた」という反論は、相手方から主張されることが非常に多いものです。しかし、「破綻」の法的な認定は、単に「夫婦仲が悪かった」というだけでは認められず、裁判所は客観的な事実に基づいて慎重に判断します。
裁判所が夫婦関係の破綻を判断する際に考慮する主な事情は以下のとおりです。
- 長期間の別居:夫婦が別居している期間が長ければ長いほど、破綻が認められやすくなります。
- 離婚に向けた具体的な行動:離婚調停の申立て、離婚届の作成、弁護士への依頼など、離婚に向けた具体的なアクションがあったか。
- 家庭内別居の実態:同居していても、食事や寝室が別々で、会話もほとんどないといった家庭内別居の状態が長期間続いていたか。
- 経済的な協力関係の有無:生活費を渡していないなど、夫婦間の経済的な協力関係が失われているか。
- 性的交渉の有無:長期間にわたり性交渉がないことも、判断材料の一つとなります。
【北九州における実務経験から】
私たち平井・柏﨑法律事務所は、福岡家庭裁判所小倉支部や福岡地方裁判所小倉支部で、数多くの離婚・不貞慰謝料案件を取り扱ってまいりました。その経験から申し上げますと、北九州地域の裁判実務においても、単なる「性格の不一致」や「喧嘩が多かった」といった主観的な事情だけで「破綻」が簡単に認められることはありません。裁判所は、上記の要素を総合的に考慮し、「もはや婚姻関係を修復することが社会通念上不可能な状態に至っていたか」という厳しい目で判断します。相手方から「破綻していた」と主張されても、安易に諦める必要はありません。
「破綻していた」と反論されたら?有効な証拠と対抗策
不倫相手から「あなたの配偶者から『もう夫婦関係は終わっている』と聞いていた」と反論されるケースは少なくありません。このような主張に対抗し、婚姻関係が破綻していなかったことを証明するためには、客観的な証拠が重要になります。
【破綻していなかったことを示す有効な証拠の例】
- 不貞行為が始まる直前の時期に、家族で旅行に行ったり、誕生日を祝ったりしている写真や動画
- 夫婦や家族の仲睦まじい様子がうかがえるSNSの投稿
- 定期的に性的交渉があったことを示す手帳の記録やメールのやり取り
- 協力して子どもの学校行事に参加していた事実
- 将来の計画(家の購入など)について話し合っていたメールやLINE
- 親族や共通の友人の陳述書
これらの証拠を準備し、「平穏な婚姻生活が確かに存在していた」ことを具体的に主張していくことが、相手の反論に対抗する上で極めて有効です。
「破綻」の判断は個別の事情に大きく左右されます。ご自身のケースが法的にどう評価されるかについては、専門家である弁護士の意見を聞くことが不可欠です。
慰謝料請求できるか不安な方は北九州の弁護士へご相談ください
ここまで、不倫慰謝料を請求できない具体的なケースについて解説してきました。ご自身の状況を当てはめてみて、請求できるのか、それとも難しいのか、かえって不安が大きくなってしまった方もいらっしゃるかもしれません。
不倫慰謝料を請求できるか否かの最終的な判断は、法的な専門知識に基づき、お手元にある証拠を的確に評価した上で行う必要があります。ご自身で「これは請求できないケースだ」と判断し、本来得られるはずだった正当な権利を諦めてしまうのは、非常にもったいないことです。
特に、時効が迫っている場合や、証拠が散逸してしまう恐れがある場合は、一刻も早い対応が求められます。証拠は時間が経つほど集めにくくなり、相手方が削除してしまうリスクも高まります。早期にご相談いただくことで、証拠の保全方法について具体的なアドバイスができ、有利な解決に繋がる可能性が高まります。
もし少しでもご不安な点があれば、ぜひ一度、私たち平井・柏﨑法律事務所の無料相談のご予約はこちらをご利用ください。この記事で解説した内容はあくまで一般的なものであり、個別の事情によって結論は大きく異なる可能性があることをご理解ください。より詳しい情報については、当事務所のウェブサイトにて「不貞行為の慰謝料請求|請求できる条件とできないケースを弁護士が解説」といったテーマの記事も掲載しておりますので、ご参照ください。
平井・柏﨑法律事務所にご相談いただくメリット
当事務所は、JR小倉駅から徒歩5分というアクセスしやすい場所にあり、北九州市およびその近郊にお住まいの皆様から、離婚・男女問題に関するご相談を受け付けています。
- 離婚・男女問題に注力しています
事務所開設以来、一貫して離婚・男女問題に力を入れており、特に不倫慰謝料請求については豊富な経験とノウハウを有しています。 - 男女弁護士在籍による相談のしやすさ
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(監修者情報)
この記事は、平井・柏﨑法律事務所の弁護士 平井 章悟(福岡県弁護士会所属)の監修のもと作成されています。
最終更新日:2025年12月5日

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