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「俺の稼いだ金」は通用しない!別居中でも生活費は請求できる
「お前が勝手に出ていくなら、一銭も渡さない」「俺の稼いだ金を好きに使わせるか」。
夫からこのような言葉を突きつけられ、お子様を抱えて先の見えない不安と、理不尽な仕打ちへの怒りに震えていらっしゃるのではないでしょうか。北九州市内のスーパーでの買い物も、お子様の習い事の月謝も、日々の生活費の全てが重くのしかかり、精神的に追い詰められているかもしれません。
しかし、どうか覚えておいてください。その主張は、法律上、完全に間違っています。
夫婦である限り、たとえ別居していても、お互いの生活レベルが同等になるように助け合う義務があります。これは民法第760条で定められた「婚姻費用の分担義務」という、あなたの正当な権利です。収入の多い夫は、収入の少ないあなたの生活を、自分と同じ水準に保つ「生活保持義務」を負っているのです。
つまり、夫が稼いだお金が夫名義で管理されていても、夫婦である限り、民法第760条に基づき婚姻費用(生活費)の分担を請求する権利があります。経済的な力であなたを支配しようとする行為は、許されるものではありません。
この記事では、あなたがその権利を行使し、今の苦しい状況から抜け出すための具体的な方法を、私たち弁護士が専門家の視点から解説します。泣き寝入りする必要は一切ありません。法律を味方につけて、毅然と対抗しましょう。
あなたはいくら貰える?婚姻費用算定表の正しい見方
「具体的に、毎月いくら請求できるの?」という点が、今一番知りたいことだと思います。その目安となるのが、裁判所が公開している「婚姻費用算定表」です。家庭裁判所での調停や審判でも、この算定表を基準として金額が決められることがほとんどです。
算定表の見方は、決して難しくありません。以下の3つのステップで確認してみましょう。
- 夫婦それぞれの年収を確認する
あなたの年収(パート収入など。なければ0円)と、夫の年収を確認します。会社員であれば源泉徴収票の「支払金額」、自営業者であれば確定申告書の「所得金額」が目安となります。 - お子様の人数と年齢に応じた表を選ぶ
算定表は、お子様の人数(0人〜3人)と年齢(0〜14歳、15〜19歳)によって分かれています。ご自身の状況に合った表を選んでください。 - 縦軸と横軸が交差する箇所を確認する
表の縦軸が「義務者(支払う側=夫)」の年収、横軸が「権利者(受け取る側=あなた)」の年収です。それぞれの年収が交差するマスに書かれている金額が、1ヶ月あたりの婚姻費用の目安となります。
例えば、夫の年収が600万円(会社員)、あなたのパート収入が100万円、お子様が2人(5歳と8歳)というケースで見てみましょう。この場合、算定表では「12万円~14万円」の範囲が示されます。これが、あなたが毎月受け取れる生活費の相場です。
いかがでしょうか。「思ったよりも高い」と感じられた方も多いかもしれません。これは、あなたが受け取るべき正当な金額なのです。
裁判所のウェブサイトで最新の婚姻費用算定表を実際に確認し、ご自身のケースに当てはめてみてください。

【専門家の視点】算定表だけでは決まらないケースとは?
裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」はあくまで目安です。例えば、夫が住宅ローンを支払っている家にあなたが住んでいる場合や、お子さんが私立学校に通っている場合など、個別の事情に応じて金額は変動します。特に別居は二重生活となるため生活コストが嵩みがちです。安易に低い金額で合意せず、ご自身の状況に応じた適正額を請求することが、生活再建の第一歩となります。
具体的には、以下のような事情がある場合、算定表の金額に修正が加えられる可能性があります。
- 夫が住宅ローンを支払っている家にあなたが住んでいる場合:あなたが家賃負担を免れているとして、婚姻費用が減額調整されることがあります。
- お子様が私立学校に通っている場合:公立学校の学費を超える部分は、双方の収入や合意の有無に応じて、婚姻費用に加算される可能性があります。
- 高額な医療費がかかる場合:お子様やあなたに持病があり、特別な医療費が必要な場合も、加算の対象となることがあります。
こうした個別具体的な事情を適切に主張し、あなたにとって有利な条件を勝ち取るためには、法律の専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
支払いがない場合の手段:給料の差し押さえ(強制執行)
話し合いを求めても夫が応じない、あるいは「払わない」の一点張り。そんな状況で、あなたの権利を実現するための最も強力な法的手段が「給料差し押さえ(強制執行)」です。
給料の差し押さえ(強制執行)は、支払いを確保するための実務上有効な手段の一つです。
ただし、給料差し押さえをいきなり行うことはできません。まずは家庭裁判所での調停や審判を経て、「調停調書」や「審判書」といった公的な文書(これを「債務名義」と呼びます)を取得する必要があります。この債務名義があって初めて、強制執行の手続きに進むことができます。
もし、相手方が支払いに応じない場合に強制執行を考えているのであれば、公正証書を作成しておくことも有効な手段です。
給料差し押さえには、主に3つの絶大なメリットがあります。
- 会社からあなたの口座へ直接振り込まれる
一度手続きが完了すれば、夫が会社を辞めない限り、毎月、会社(給与の支払者)から直接あなたの銀行口座へ婚姻費用が振り込まれます。夫の気分や都合に左右されることなく、安定した生活費を確保できるのです。 - 手取り額の「2分の1」まで差し押さえ可能
一般的な借金の差し押さえは手取り額の4分の1までですが、婚姻費用や養育費といった扶養に関する権利は法律で手厚く保護されており、手取り額の2分の1までという非常に強力な差し押さえが可能です。さらに、一度の手続きで「将来支払われる分」についても差し押さえを継続できるため、非常に効果的です。 - 夫の社会的信用に大きな影響を与える
裁判所から夫の勤務先に「債権差押命令」が送達されます。これにより、会社は「この従業員が家庭内の金銭トラブルで法的手続きを取られている」という事実を知ることになります。特に北九州市内の大手企業や公務員など、社会的信用を重んじる職場であれば、これは夫にとって計り知れない心理的プレッシャーとなるでしょう。このプレッシャーが、話し合いを有利に進めるための強力な交渉材料になることも少なくありません。
このように、給料差し押さえは、支払いを拒む相手に対する極めて有効な手段です。あなたは泣き寝入りする必要などないのです。
給料差し押さえまでの具体的な3ステップ
「裁判所の手続きは難しそう」と不安に思うかもしれませんが、給料差し押さえまでの道のりは、明確なステップに分かれています。一人で進めるのが困難な場合でも、弁護士が全面的にサポートしますのでご安心ください。
ステップ1:家庭裁判所へ「婚姻費用分担請求調停」を申し立てる
まずは、家庭裁判所で話し合いの場を設けます。調停委員という中立な第三者を交えて、婚姻費用の金額や支払方法について協議します。
ステップ2:調停が不成立なら「審判」へ移行
調停で話し合いがまとまらない場合、手続きは自動的に「審判」に移ります。審判では、裁判官が双方の事情を聞き、一切の事情を考慮して、支払うべき婚姻費用の額を法的に決定します。この審判で出された「審判書」や、調停で合意した場合に作成される「調停調書」が、前述の「債務名義」となります。
ステップ3:地方裁判所へ「債権差押命令」を申し立てる
審判や調停で金額が決まったにもかかわらず、夫が支払いを怠った場合に、いよいよ最終段階です。夫の住所地を管轄する地方裁判所(北九州市であれば福岡地方裁判所小倉支部など)に「債権差押命令申立」を行います。これが認められれば、裁判所から夫の勤務先へ命令が送達され、給料の差し押さえが実行されます。
より具体的な手順については、離婚調停の流れと期間をご覧ください。

1日も待てない!生活費をすぐに確保する「審判前の保全処分」
「調停や審判の結果を待っていたら、来月の家賃も払えない…」
お子様を抱え、日々の生活に困窮している方にとって、数ヶ月先の結果を待つ時間的猶予はないかもしれません。そのような緊急事態に対応するための、非常に重要な手続きがあります。
それが「審判前の保全処分(仮払いの仮処分)」です。
これは、婚姻費用分担請求調停の申し立てと同時に行うことができる手続きで、調停や審判が終結するまでの間、裁判官が暫定的に生活費の支払いを命じてくれるというものです。この命令が認められれば、最終的な決定を待たずして、比較的早期に当面の生活費を確保できる可能性があります。
調停の結論が出るまでには数ヶ月かかることもあり、その間の生活が立ち行かなくなるケースは少なくありません。
北九州の私たちが力になります
経済的な問題は、私たちが一緒に解決策を探しますので、どうか安心してご相談ください。
夫からの経済的DVによって失われた心の平穏と、当たり前の生活を取り戻す方法は、必ずあります。一人で抱え込まず、まずは私たちにあなたの状況をお話しください。平井・柏﨑法律事務所は、あなたの勇気ある一歩を全力でサポートします。
離婚・男女問題に関する初回相談(面談)は無料です。お電話またはウェブサイトからご予約ください。
監修者情報
監修:弁護士 平井章悟(福岡県弁護士会所属/平井・柏﨑法律事務所)
最終更新日:2026年2月17日

平井・柏﨑法律事務所は、北九州市を中心に福岡県内の離婚・男女問題に特化した法律事務所です。
財産分与や慰謝料請求、親権、養育費など、複雑な法律問題を数多く解決してきた豊富な実績とノウハウが強みです。
特に、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案することで、不安な気持ちを和らげ、未来へ踏み出すお手伝いをいたします。
また、複数の男女弁護士が在籍しているため、ご希望に応じて話しやすい弁護士が担当することも可能です。
離婚や男女問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせください。
