監修:弁護士 平井章悟(福岡県弁護士会所属/平井・柏﨑法律事務所)
最終更新日:2026年8月3日
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婚約破棄・婚約中の浮気と法的責任について
結婚に向けて準備を進めている段階で、パートナーから一方的に婚約を破棄される、あるいは婚約中に浮気をされるといった事態は、精神的苦痛を伴う問題です。結婚式場や新居の準備を進めていた場合には、経済的な損害も発生し、結婚に向けた生活設計に大きな影響が生じることもあります。このテーマの全体像については、慰謝料で体系的に解説しています。
このような婚約破棄をめぐる問題は、単なる感情のもつれでは済まされません。法的に有効な婚約が成立している場合、正当な理由なく一方的に関係を破棄する行為は、法的な賠償責任が問われる可能性があります。しかし、その責任を問うためには、冷静に事実関係を整理し、法的な評価を行うことが不可欠です。
具体的には、以下の3つのポイントが重要な論点となります。
- 法的に有効な「婚約」が成立していたか
- 婚約破棄に「正当な理由」がないこと
- 賠償を求める損害の範囲(慰謝料と財産的損害)
本記事では、私たち平井・柏﨑法律事務所の弁護士が、これらの論点について、専門家の視点から客観的かつ分かりやすく解説します。ご自身の状況を法的に整理し、今後の対応を検討するための一助となれば幸いです。
慰謝料請求の法的根拠と3つの重要論点
婚約は、将来夫婦になることを約束する契約です。したがって、正当な理由なく一方的にこの約束を破る行為は、民法上の「債務不履行」または「不法行為」に該当する可能性があり、それによって生じた損害(精神的・財産的)を賠償する責任を負うことになります。これが、婚約破棄における慰謝料請求の法的根拠です。
もっとも、請求が認められるか否かは、個別の事情によって大きく異なります。実務上、私たちは以下の3つの論点を軸に、事案を慎重に評価します。
論点1:法的に「婚約」は成立していたか?
慰謝料請求を検討する際に最初に確認すべき点は、法的に保護されるべき「婚約」が成立していたと客観的に証明できるか、という点です。単に「結婚しようね」といった口約束だけでは、法的な保護の対象となる婚約とは認められにくいのが実情です。
裁判実務では、当事者間に明確な婚姻の意思の合致があり、それが外部から見ても明らかである状態を求めています。その証明として、以下のような客観的な事実の積み重ねが極めて重要となります。
- 結納の実施
- 婚約指輪の授受
- 両家の親族への挨拶、顔合わせ
- 結婚式場の予約、費用の支払い
- 新婚旅行の予約
- 新居の賃貸借契約や購入契約
- 周囲(職場や友人)への報告
これらの事実は、単なる交際関係を超え、二人が夫婦になるという約束を真摯に結んでいたことの証左として評価されます。婚約の成否は、慰謝料請求の可否を左右する根本的な問題です。なお、交際相手が既婚者であることを隠していた場合は、そもそも婚約自体が無効であり、別途、貞操権侵害等を理由とする慰謝料請求の問題となります。
論点2:婚約破棄に「正当な理由」はあるか?
婚約が成立していたとしても、その破棄に「正当な理由」があれば、慰謝料の支払義務は発生しません。問題は、何が「正当な理由」と認められるかです。これは、婚約という契約関係を継続することが社会通念に照らして困難といえるような、重大な事情の有無によって判断されます。

【正当な理由と認められやすい例】
- 相手方の浮気(不貞行為):婚約相手としての信頼関係を大きく損なう行為です。
- DV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ:身体的・精神的な暴力は、安全な婚姻生活を期待できない重大な理由となります。
- 多額の借金や犯罪歴などを隠していた:申告すべき重要な事実を隠蔽していた場合、信頼関係が失われたと評価されます。
- 深刻な病気や性的不能を隠していた場合
- 理由なく同居や結婚式を拒否するようになった場合
【正当な理由と認められにくい例】
- 「単に気持ちが冷めた」
- 「他に好きな人ができた」
- 「性格の不一致を感じるようになった」
- 親や家族の反対(合理的な理由がない場合)
「気持ちが冷めた」「他に好きな人ができた」といった一方的かつ主観的な理由は、原則として婚約破棄の「正当な理由」にはならず、不当破棄として慰謝料支払いの責任を負う可能性が高いといえます。いわゆる性格の不一致は、離婚原因としては考慮され得ますが、婚約破棄の正当事由としては認められにくい傾向にあります。
論点3:賠償を求める損害の範囲と慰謝料相場
婚約を不当に破棄された場合に請求できる損害は、大きく分けて2種類あります。
- 精神的損害(慰謝料)
婚約を破棄されたことによる精神的苦痛に対して支払われるものです。金額は、婚約期間、破棄の理由や態様、当事者の年齢、社会的地位など、様々な事情を総合的に考慮して算定されます。裁判実務における慰謝料の相場は、事案にもよりますが、概ね50万円~200万円程度となることが多いです。 - 財産的損害
結婚を信頼して支出した具体的な費用のことです。慰謝料とは別に請求することが可能です。
【財産的損害の例】- 結婚式場や披露宴会場のキャンセル料
- 新婚旅行のキャンセル料
- 新居の契約金、手付金、家賃
- 婚約指輪や結納金の費用
- 結婚を機に退職した場合の逸失利益
ここで注意すべきは、婚姻後の浮気(不貞行為)と、婚約中の浮気が原因の破棄とでは、法的な構成が若干異なる点です。前者は主に不法行為として慰謝料が問題となりますが、後者は婚約という契約の債務不履行としての側面も持ちます。そのため、精神的苦痛に対する慰謝料に加え、上記のような財産的損害の清算も併せて必要となるのが特徴です。婚約関係が破綻したことで貞操権が侵害されたと評価されるケースもあります。
【弁護士が回答】婚約破棄に関するよくあるご質問
ここでは、私たちが実際にご相談を受ける中でよくお伺いする質問について、Q&A形式で回答いたします。
Q. 結納はまだですが、婚約指輪をもらい両家の親にも挨拶を済ませていました。彼が浮気をして婚約破棄になった場合、慰謝料は請求できますか?
A. ご請求できる可能性が高いです。
結納という形式的な儀式を行っていなくとも、「婚約指輪の授受」や「ご両親への挨拶」といった客観的な事実は、法的に「婚約が成立していた」と評価されるための重要な要素となります。これらの事実は、お二人に明確な婚姻の意思があり、それが外部にも表明されていたことの証左といえるからです。
そして、婚約中の浮気は、婚約関係の信頼を大きく損なう行為であり、婚約破棄の「正当な理由」とは認められにくいと考えられます。したがって、この浮気が原因で婚約破棄に至った場合、相手方の行為は不当破棄(債務不履行または不法行為)と評価され、精神的苦痛に対する慰謝料や、式場のキャンセル料といった実費(財産的損害)の賠償を請求できる可能性があります。浮気の事実を裏付けるLINEのやり取りなどの証拠を保全しておくことも重要です。

Q. 婚約中ですが、どうしても性格が合わず結婚をやめたいです。相手から慰謝料を請求されたら払わなければなりませんか?
A. 一定の賠償責任を負う可能性があります。
ご自身の意思で婚約破棄を決断される場合、その理由が法的に「正当な理由」と認められるかが焦点となります。しかし、残念ながら「性格の不一致」や「気持ちの変化」といった主観的な理由は、原則として法的な正当事由とは認められにくく、不当破棄と判断されるリスクがあります。
ただし、相手方から請求された金額をそのまま支払わなければならないわけではありません。請求額が、事案の内容に比して相場(一般的に50万円~200万円程度)を著しく超える高額なものである場合、適正な金額へと調整するための示談交渉が可能です。不当に高額な請求に対しては、減額交渉を行う余地がありますので、ご自身のみで判断せず、まずは専門家にご相談ください。
婚約破棄の慰謝料請求を進めるための法的手続き
婚約破棄による慰謝料請求を具体的に進める場合、まずは当事者間での「示談交渉」から始めるのが一般的です。冷静な話し合いによる解決が双方にとって最も負担が少ない方法といえます。
しかし、感情的な対立から話し合いが難しい場合や、相手が請求を真摯に受け止めない場合には、弁護士名義で「内容証明郵便」を送付し、こちらの法的な請求の意思を明確に伝える方法が有効です。これにより、相手方が交渉に応じる姿勢に変わることも少なくありません。万が一、請求を無視された場合でも、法的手続きへ移行する準備となります。
それでも解決に至らない場合は、家庭裁判所における「調停」や、地方裁判所での「訴訟」といった裁判手続きを利用することになります。調停は話し合いを基本としますが、訴訟では裁判官が証拠に基づいて法的な判断を下します。
なお、示談交渉や調停で合意が成立した際には、後のトラブルを防ぐため、合意内容を公正証書として作成しておくことも有効です。特に、金銭の支払いについて強制執行認諾文言を付した公正証書を作成しておけば、支払いが滞った場合に、訴訟を経ずに強制執行(給与の差押えなど)を検討できる場合があります。
北九州で婚約破棄のお悩みは、当事務所の対面相談へ
婚約破棄の事案は、法的に保護される婚約関係にあったかの立証、破棄に至る経緯の評価、そして慰謝料と財産的損害の適切な切り分けなど、複雑な法的評価と緻密な交渉が不可欠です。感情的な対立が激しくなりがちな問題だからこそ、法律の専門家が冷静に介入し、客観的な視点から解決の道筋を示すことが重要となります。
特に、「法的に保護される婚約関係にあったか」「式場のキャンセル料等の財産的損害をどう切り分けるか」といった客観的な評価は、お電話のみでは極めて困難です。
当事務所では、事案の全体像を正確に把握し、適正な解決を図るため、お電話やオンラインでのご相談は承っておりません。必ず小倉北区の当事務所へ直接ご来所いただき、LINEのやり取りや領収書などの客観的資料を対面で慎重に確認させていただいた上で、具体的な法的見通しをご提示いたします。
北九州市やその近郊(行橋市、中間市など)で婚約破棄の問題にお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずは平井・柏﨑法律事務所の対面相談をご予約ください。当事務所が、事実関係と資料を確認した上で、今後の対応を法的観点からご案内します。

平井・柏﨑法律事務所は、北九州市を中心に福岡県内の離婚・男女問題に特化した法律事務所です。
財産分与や慰謝料請求、親権、養育費など、複雑な法律問題を数多く解決してきた豊富な実績とノウハウが強みです。
特に、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案することで、不安な気持ちを和らげ、未来へ踏み出すお手伝いをいたします。
また、複数の男女弁護士が在籍しているため、ご希望に応じて話しやすい弁護士が担当することも可能です。
離婚や男女問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせください。
