不倫で証拠にならないものとは?北九州の弁護士が具体例と判断基準を解説

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不倫の証拠で慰謝料請求が決まる?まずは基本を知ろう

「配偶者が不倫しているかもしれない…」「不倫の証拠らしきものは見つけたけれど、これで慰謝料を請求できるのだろうか…」

パートナーの裏切りを知り、心に深い傷を負いながらも、必死の思いで証拠を集めていらっしゃる方は少なくありません。しかし、その集めたものが、法的な手続きにおいて「証拠」として認められるとは限らないのが現実です。

不倫の慰謝料請求では、客観的な「証拠」が何よりも重要です。もし有効な証拠がなければ、相手が事実を認めない限り、請求は非常に困難になります。

この記事では、離婚・男女問題に注力してきた私たち弁護士が、どのようなものが「不倫の証拠にならないのか」、その具体例と判断基準を専門家の視点から詳しく解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、証拠にならないものに時間と労力を費やすことを避け、ご自身の状況を冷静に把握し、次にとるべき最善の一手を考える一助となれば幸いです。

慰謝料請求の根拠「不貞行為」とは?

不倫の慰謝料を請求する法的な根拠は、民法709条に定められた「不法行為」にあります。そして、裁判所が慰謝料支払いを命じる不法行為とは、一般的に「不貞行為」があった場合です。

この「不貞行為」とは、法律上、「配偶者以外の異性と、自由な意思に基づいて肉体関係(性交渉およびそれに類する行為)を持つこと」と定義されています。

多くの方が「不倫」と聞いてイメージする、二人きりの食事やデート、親密なメッセージのやり取りだけでは、原則として「不貞行為」とは認められません。裁判所は、あくまで「肉体関係があったか否か」を客観的な証拠に基づいて判断します。この定義が、後に解説する「証拠にならないもの」を理解する上での大前提となります。

なぜ「証拠にならない」ものが存在するのか?

では、なぜ「証拠にならない」ものが存在するのでしょうか。その答えは、前述の「不貞行為」の定義にあります。つまり、「肉体関係があったことを直接証明できないから」です。

例えば、二人が親密そうに食事をしている写真があったとしても、それだけでは「友人や同僚と食事をしていた」と言われれば、それ以上の追及は難しくなります。裁判所は、当事者の感情や推測ではなく、客観的な事実に基づいて判断を下す機関です。

したがって、単に仲が良いことを示すだけの状況証拠では、「不貞行為があった」と断定するには不十分であり、「推測の域を出ない」と判断されてしまうリスクがあるのです。だからこそ、証拠の有効性を冷静に見極める視点が不可欠となります。

【一覧】不倫の証拠にならない・なりにくい具体例10選

私たち平井・柏﨑法律事務所は、これまで福岡家庭裁判所小倉支部や福岡地方裁判所小倉支部における数多くの離婚・不貞慰謝料に関する裁判を経験をしてきました。その豊富な実務経験から、ご相談者様が証拠としてお持ちになるものの、残念ながらそれ単体では「不貞行為」の証明としては不十分と判断されやすいケースを10個、具体的に解説します。

①二人きりの食事やデートの写真・動画

配偶者と不倫相手が二人きりで食事をしていたり、楽しそうに街を歩いていたりする写真や動画。これらは裏切られた側にとって大変ショックなものですが、法的には証拠として弱いと言わざるを得ません。

なぜなら、これらの行為は友人や同僚の関係でもあり得るため、「肉体関係があった」ことの直接的な証明にはならないからです。ただし、他の証拠と組み合わせることで、二人の親密さを示す状況証拠の一つとして意味を持つ場合はあります。

レストランで二人きりで食事をしている男女。不倫の状況証拠の一つ。

②「好き」「会いたい」だけのLINEやSNSのやり取り

「好きだよ」「早く会いたいな」といった愛情表現を含むLINEやSNSのメッセージも、それだけでは不貞行為の証拠としては不十分です。

このようなやり取りは、精神的なつながり(プラトニックな関係)を示すものに過ぎず、肉体関係の存在を証明するものではないと判断される可能性があります。特にLINEやSNSに関するご相談は非常に多いですが、慰謝料請求で有効な証拠とするには、より踏み込んだ内容が必要です。

例えば、性交渉があったことをうかがわせる「昨日は楽しかったね」「次はいつ泊まれる?」といった具体的なやり取りがあれば、証拠としての価値は格段に高まります。より詳しい証拠の集め方については、「不倫慰謝料請求|証拠の集め方と手続きの流れを弁護士が解説」のページでも解説していますので、ご参照ください。

③キスやハグをしている写真・動画

キスやハグは、二人きりの食事よりも親密な行為ですが、これらも法的な「不貞行為(=肉体関係)」そのものではありません。そのため、キスやハグの写真・動画だけでは、慰謝料請求が認められない可能性があります。

ただし、これらの行為が夫婦の婚姻関係の平穏を害する行為であることは間違いありません。そのため、不貞行為とは認められなくとも、別の不法行為として、限定的な金額ではあるものの慰謝料が認められる可能性はゼロではありません。このあたりの判断は非常に専門的になりますので、弁護士にご相談ください。

④ビジネスホテルやシティホテルの領収書

ラブホテルへの出入りが確認できれば強力な証拠となりますが、ビジネスホテルやシティホテルの場合は注意が必要です。これらのホテルは、出張や一人での宿泊など、業務やプライベートで一人で利用することも考えられるためです。

特に、領収書の名義が配偶者一人分であった場合、「一人で宿泊した」と反論されると、それを覆すのは容易ではありません。二人で宿泊したことを示す別の証拠(例:ホテルの出入りを撮影した写真など)が必要になります。

⑤プレゼントや高価な食事のレシート

配偶者が不倫相手に高価なプレゼントを贈っていたり、高級レストランで食事をしたりしたことがわかるレシートやクレジットカードの明細。これらは二人の親密な関係を推測させるものですが、残念ながら肉体関係を直接証明するものではありません。

これらもあくまで、複数ある証拠の一つとして、二人の関係性の深さを示す状況証拠という位置づけになります。

⑥GPSの位置情報履歴のみ

GPS発信機を車に取り付け、ラブホテルや不倫相手の自宅に長時間滞在していた記録が取れたとします。これは不貞行為を強く疑わせる有力な情報ですが、GPSの記録だけでは証拠として不十分です。

なぜなら、GPSは場所と時間を示すだけで、「誰とそこにいたか」までは証明できないからです。「一人で休憩していた」「友人と会っていた」などと言い逃れされる可能性があります。GPSの情報は、必ずホテルに出入りする二人の写真など、他の証拠と組み合わせることが不可欠です。

⑦第三者からの「見た」という伝聞情報

ご友人や知人から「ご主人が女性とホテルに入っていくのを見た」といった目撃情報を得ることがあります。しかし、このような第三者からの伝聞(又聞き)は、それだけでは法的な証拠になりにくいのが実情です。

目撃者の記憶が曖昧であったり、個人的な感情が混じっていたりする可能性があり、客観性に欠けると判断されがちです。その証言を法的に有効なものにするためには、裁判所で証言してもらったり、詳細な内容を記した「陳述書」を作成し署名押印してもらったりするなどの手続きが必要となり、ハードルは決して低くありません。

⑧避妊具や浮気相手の私物が家にあったという事実

普段使わないはずの避妊具が見つかったり、明らかに自分のものではない女性もののアクセサリーが車から出てきたりした場合、不貞行為を強く推認させます。

しかし、これらも決定的な証拠とはなりにくい側面があります。「誰のものか分からない」「いつからそこにあったか知らない」といった反論をされる可能性があるからです。写真などで記録を残しておくことは重要ですが、これも他の証拠と組み合わせて立証していく必要があります。

⑨職場での親密な様子や二人きりの残業

職場不倫でよくご相談いただくのが、「いつも二人きりで残業している」「飲み会でも隣に座って親密そうに話している」といったケースです。

しかし、これらの行為は業務の一環であったり、単なる仲の良い同僚としての行動であったりする可能性を否定できません。職場での様子だけでは、不貞行為の証明は困難です。業務時間外や休日に、二人きりで会っている証拠(デートや旅行、ホテルへの出入りなど)が必要となります。

夜のオフィスで二人きりで残業している男女。職場不倫の証拠としては不十分な例。

⑩配偶者の自白を録音したが、強要が疑われるもの

配偶者を問い詰めて、不貞行為を認めさせた自白の録音は、証拠となり得ます。しかし、その取得方法には注意が必要です。

大声で怒鳴りつけたり、長時間にわたって問い詰めたりして、無理やり言わせたような自白は、相手の自由な意思に基づかないもの(任意性に疑いがある)として、裁判で証拠能力が否定されるリスクがあります。あくまで、冷静な状況下で、相手が自発的に事実を話している録音であることが重要です。

不十分な証拠を「使える証拠」に変える弁護士の視点

ここまで「証拠にならない・なりにくい」例を挙げてきましたが、どうか諦めないでください。一つひとつは弱くても、複数の証拠を組み合わせることで、不貞行為の事実を強く推認させ、慰謝料請求を可能にする「合わせ技」という考え方があります。ここからは、不十分な証拠を「使える証拠」に変えるための弁護士の視点について解説します。

弱い証拠(LINE、レシート、GPS)を組み合わせて不貞行為を立証する流れを示した図解。

証拠の「強弱」を評価する判断基準とは

私たち弁護士は、ご相談者様がお持ちになった証拠を評価する際、主に以下の3つの基準でその「強弱」を判断しています。

  1. ①肉体関係との関連性(直接性)
    その証拠が、どれだけ直接的に肉体関係の存在を示しているか。例えば、ラブホテルに出入りする写真や動画は関連性が非常に強く、二人きりの食事の写真は弱い、ということになります。
  2. ②客観性(言い逃れの余地のなさ)
    誰が見ても明らかで、言い逃れが難しい証拠であるか。当事者のメッセージよりも、第三者が発行したクレジットカードの明細や、日時が記録された写真の方が客観性は高くなります。
  3. ③複数存在するか(継続性・頻度)
    不貞行為が一度きりではなく、継続的に行われていることを示す証拠があるか。複数の証拠があり、不貞の頻度や期間が長ければ、それだけ悪質と判断され、慰謝料の金額にも影響します。

これらの基準に照らし合わせ、お手持ちの証拠を多角的に見直すことで、その価値を冷静に評価することができます。

弱い証拠を組み合わせ、立証価値を高める方法

単体では弱い証拠も、戦略的に組み合わせることで、その立証価値を飛躍的に高めることが可能です。これは、点と点を線で結び、裁判官に「これだけの証拠が揃えば、肉体関係があったと考えるのが自然だ」と確信させるストーリーを構築する作業です。

例えば、LINE・職場不倫・SNSなど、私たちが実務でよく扱う証拠の組み合わせパターンには、以下のようなものがあります。

  • 「LINEで会う約束」「同日の飲食店のクレジットカード明細」「GPSでのラブホテル街への滞在記録」「翌日の『昨日はありがとう』というLINE」
  • 「二人きりの出張のスケジュール」「同日のホテルで、一つの部屋の予約が確認できる領収書」「二人で観光地を訪れている写真」
  • 「SNSの裏アカウントでの親密なやり取り」「相手の自宅マンションに出入りする車のドライブレコーダー映像」「『今から行くね』という通話録音」

このように、様々な証拠を時系列に沿ってパズルのように組み合わせることで、言い逃れのできない強固な立証を目指します。諦めかけていた証拠も、専門家である弁護士の視点で見れば、重要なピースとなる可能性があるのです。

注意!証拠が無効になるケースと違法収集のリスク

証拠を集めることに必死になるあまり、行き過ぎた行動に出てしまうと、その証拠が裁判で使えなくなる(証拠能力が否定される)ばかりか、ご自身が法的な責任を問われるという深刻なリスクがあります。専門家の立場から、証拠収集の際に絶対に避けるべき注意点について解説します。

プライバシー侵害にあたる証拠収集とは

相手のプライバシーを著しく侵害する方法で得た証拠は、「違法収集証拠」として裁判所に提出しても証拠として採用されない可能性があります。それどころか、相手からプライバシー侵害を理由に損害賠償請求(慰謝料請求)をされてしまう危険性すらあります。

具体的には、以下のような行為が該当する可能性があります。

  • 配偶者のスマートフォンに無断で監視アプリ(スパイアプリ)をインストールする
  • IDとパスワードを無断で使い、PCのメールやSNSのダイレクトメッセージを盗み見る
  • 相手のメールを自分のアドレスに自動転送されるよう、無断で設定する

夫婦間であっても、個人のプライバシーは尊重されなければなりません。感情に任せた行動は禁物です。

住居侵入罪や器物損壊罪に問われる可能性

プライバシー侵害だけでなく、刑事罰の対象となる犯罪行為にまで及んでしまうケースも想定されます。

  • 住居侵入罪:不倫の証拠を探すために、不倫相手の自宅やマンションの敷地に無断で立ち入る行為。
  • 器物損壊罪:相手の車にGPSを取り付ける際に、バンパーなどを傷つけてしまう行為。
  • 不正アクセス禁止法違反:他人のID・パスワードを無断で使用して、SNSやクラウドサービスなどにログインする行為。

精神的に追い詰められる中で、冷静な判断が難しくなるお気持ちは痛いほど分かります。しかし、一線を越えた行動は、ご自身の立場を著しく不利にしてしまいます。どのように証拠を集めればよいか分からなくなった時こそ、専門家である弁護士にご相談ください。

証拠が不十分でも諦めないで。北九州の弁護士にご相談ください

「自分の持っている証拠では、慰謝料請求は無理かもしれない…」
ここまで読んで、そのように不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、どうか一人で結論を出してしまう前に、一度私たちにご相談ください。

ご自身では「弱い」と感じる証拠でも、専門家の目から見れば十分に有効な証拠となり得ることや、他の証拠と組み合わせることで活路が見いだせるケースは少なくありません。また、裁判をしなくても、相手との交渉次第で解決できる可能性も十分にあります。

弁護士だからできること:証拠の精査と今後の最善策のご提案

不倫問題について弁護士にご相談いただくことには、以下のような大きなメリットがあります。

  1. お手持ちの証拠の有効性を法的に、かつ客観的に評価できます。
  2. もし証拠が不足している場合、どのような証拠を追加で集めるべきか、そしてその合法的な収集方法について具体的にアドバイスできます。
  3. 訴訟(裁判)という選択肢だけでなく、相手との交渉によって早期解決を図るための戦略を立てることができます。

感情的になりがちな問題だからこそ、法律の専門家が冷静な第三者として介入することで、ご依頼者様にとって最善の解決への道筋を照らすことができるのです。

北九州で不倫問題にお悩みなら、まずはお早めにご相談を

私たち平井・柏﨑法律事務所は、JR小倉駅から徒歩5分というアクセスしやすい場所に事務所を構え、これまで北九州市およびその近郊の皆様から、多くの離婚・不倫問題のご相談をお受けしてまいりました。地域の皆様のお悩みに寄り添い、最善の解決策をご提案することを使命としています。

不倫の証拠は、時間が経つと相手によって削除されたり、入手が困難になったりするリスクが常に伴います。問題解決の第一歩は、できるだけ早く専門家に相談し、現状を正確に把握することです。

平井・柏﨑法律事務所では、不倫の慰謝料請求に関する初回のご相談は60分無料でお受けしています。ご相談はプライバシーに最大限配慮した完全個室で行いますので、どうぞご安心ください。証拠が消されてしまう前に、まずはお気軽にお問い合わせください。事務所の場所など、詳しくは「事務所概要・アクセス」のページをご覧ください。

あなたの心を少しでも軽くし、未来へ向けて新たな一歩を踏み出すお手伝いができれば幸いです。
まずはこちらの初回60分無料|平井・柏﨑法律事務所の法律相談へお申し込みください。

不倫の証拠に関するよくあるご質問(Q&A)

Q. 別居後の不倫の証拠は、慰謝料請求に使えますか?

A. 夫婦関係がすでに修復不可能な状態に陥り「破綻」していた後の不貞行為については、原則として慰謝料請求は認められません。そのため、別居後に不貞行為があった場合、「別居時点で夫婦関係が破綻していたか否か」が大きな争点となります。単に別居しているという事実だけでなく、別居に至った経緯や期間、その間の夫婦の交流状況などを総合的に考慮して判断されるため、専門的な検討が必要です。

Q. 夫が風俗に通っていた場合、お店の女性に慰謝料請求できますか?

A. 原則として、困難であると言えます。風俗店の従業員は、あくまで業務として性的なサービスを提供しています。慰謝料請求が認められる不法行為には「故意・過失」が必要ですが、風俗店の従業員には「相手が既婚者と知りながら、その夫婦関係を破綻させよう」という意図(故意)があったとは通常考えにくいためです。ただし、お店の外で個人的な恋愛関係となり、継続的に会っていたような場合は、慰謝料請求が認められる可能性があります。

 

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