不倫慰謝料の分割払いは危険?未払いを防ぐ条項を北九州の弁護士が解説

不倫慰謝料「分割でしか払えない」と言われたら?

配偶者の不倫が発覚し、相手に慰謝料を請求したものの、「一括ではとても払えない。お金がないから分割にしてほしい」と言われ、対応に苦慮されているのではないでしょうか。すぐにでも全額を支払ってほしいというお気持ちは、痛いほどよく分かります。

しかし、感情的になって「一括でなければ認めない」と交渉を決裂させてしまっては、「無い袖は振れない」のが現実であり、結果的に1円も回収できないという最悪の事態も起こりかねません。かといって、安易に分割払いに応じるのは非常に危険が伴います。

重要なのは、感情に流されず、冷静に、そして法的に「回収の網」を張ることです。安易に慰謝料を減額するのではなく、「分割払い+厳しいペナルティ条項」で満額に近い慰謝料を確保する戦略こそが、あなたの権利を守るための最善策です。この記事では、不倫慰謝料の分割払いに潜むリスクを解説するとともに、万が一の不払いを防ぎ、あなたの権利を確実に守るための具体的な法的対策を、北九州市の実務に精通した弁護士が徹底的に解説します。正しい知識に基づいて対策を講じることで、未払いのリスクを下げられる可能性があります。

不倫問題の全体像については、不倫慰謝料請求|証拠の集め方と手続きの流れを弁護士が解説で体系的に解説しています。

一括払いが原則!分割払いに潜む3つのリスク

そもそも、不法行為に対する損害賠償である不倫慰謝料は、一括で支払われるのが原則です。なぜなら、分割払いには以下のような深刻なリスクが常に付きまとうからです。

  1. 相手の状況変化(失業・病気・結婚など)
    支払期間が長期にわたると、相手が失業したり、病気になったり、あるいは別の人と結婚して経済状況が変わったりする可能性があります。支払い能力がなくなれば、回収は極めて困難になります。
  2. 気持ちの変化(支払意欲の低下)
    合意当初は反省していた相手も、時間が経つにつれて「なぜ払い続けなければならないのか」と支払意欲が低下しがちです。特に、あなたとの関係が切れると、支払いを負担に感じるようになるのは想像に難くありません。
  3. 音信不通(引っ越し・転職)
    最も厄介なのが、相手が意図的に連絡を絶つケースです。引っ越しや転職をされてしまうと、現在の住所や勤務先を突き止めるのが難しくなり、請求自体ができなくなる恐れがあります。

これらのリスクは、決して絵空事ではありません。実際に支払いが滞り、途方に暮れてご相談に来られる方は後を絶たないのです。

北九州の実情:分割払いに応じるべきかの判断基準

「無い袖は振れない」という言葉があるように、相手に資力がなければ、いくら一括払いを要求しても現実的ではありません。特に、北九州エリアの一般的な所得水準や経済状況を鑑みると、無理に一括払いを求めて交渉が決裂し、結果的に1円も回収できなくなるよりは、分割払いに応じる方が賢明なケースも少なくありません。

私がご相談を受けた際、分割払いに応じるかどうかの判断材料として、以下のような点を慎重に見極めます。

  • 相手の職業と勤務先: 北九州市内の大手製造業や公務員など、収入が安定している職業か。
  • 勤続年数: すぐに辞める可能性は低いか。
  • 居住形態: 持ち家か、賃貸か。親族と同居しているか。
  • 他の債務の有無: 他にも借金などを抱えていないか。

これらの情報から相手の支払い能力と「逃げにくさ」を分析し、安易に減額するのではなく、「分割払い+厳しいペナルティ条項」で満額に近い慰謝料を確保する戦略を立てることが、実務上は極めて重要になります。

不払い対策の生命線「期限の利益喪失条項」とは?

分割払いに応じる上で、絶対に欠かせないのが「期限の利益喪失条項(きげんのりえきそうしつじょうこう)」です。この条項は、分割払いで合意する場合に、あなたの権利を守るうえで重要なポイントの一つになります。

期限の利益喪失条項の仕組みを解説する図解。支払いが滞ると残額を一括請求できることを示している。

少し難しい言葉ですが、内容は非常に重要です。まず、「期限の利益」とは、「約束した期日が来るまで支払いをしなくてもよい」という、分割払いをする側(債務者)に認められた権利のことです。例えば、「毎月末日に5万円ずつ支払う」という約束があれば、相手は「今すぐ全額払え」とは言われず、月末まで支払いを待ってもらえる権利(利益)を持っているわけです。

そして、「期限の利益を喪失する」とは、この権利を失わせることを意味します。つまり、「支払いを怠るなど、約束を破った場合には、分割払いの権利を失い、残っている金額の全てを直ちに一括で支払わなければならない」というルールを定めるのが、この条項の目的です。

もしこの条項がなければ、どうなるでしょうか?
仮に支払いが1回滞っても、あなたが請求できるのは、その滞納した1回分だけです。残りの全額を一括で請求する法的な根拠がないため、相手が支払いを再開するのを待つか、毎月請求し続けるしかありません。これでは、相手に主導権を握られてしまいます。

期限の利益喪失条項を示談書に盛り込むことには、2つの強力な効果があります。

  1. 相手への強力な心理的プレッシャー: 「1回でも支払いを怠れば、一括請求される」というプレッシャーが、支払いを継続させる強い動機付けになります。
  2. 法的な請求権の確保: 万が一不払いが発生した際に、残額全額を法的に請求する正当な根拠となり、後述する強制執行(差し押さえ)への道が開かれます。

【弁護士直伝】慰謝料の未払いを防ぐ鉄壁の3段構え

期限の利益喪失条項を土台とし、さらに防御力を高めるための具体的な手法を3つのステップで解説します。これらを組み合わせることで、未払いのリスクを最小限に抑えることが可能になります。

第1の壁:示談書に盛り込むべき2つのペナルティ条項

まず、すべての基本となる「示談書」に、以下の2つの条項を必ず盛り込みましょう。

1. 期限の利益喪失条項(怠慢約款)

前述の通り、これは必須項目です。実務上は、「支払いを1回でも怠ったとき」とするのが最も厳しい条件ですが、相手との交渉次第では「支払いを2回以上怠り、その合計額が〇万円に達したとき」といった形で、現実的な落としどころを探ることもあります。

2. 遅延損害金

これは、支払いが遅れたことに対するペナルティです。約束の支払日から遅れた日数に応じて、利息のように加算される金銭のことを指します。
利率は、特に定めがなければ法定利率が適用されます。法定利率は変動制のため、適用される利率は発生時期等により異なり得ますが、当事者間の合意によって法定利率とは別の利率を設定することも可能です(ただし、公序良俗に反する高すぎる利率は無効となる可能性があります)。

例えば、残金100万円の支払いが1年間滞った場合、年3%の遅延損害金は約3万円となります。この条項があることで、支払いを遅らせることのデメリットを相手に明確に意識させることができます。
法定利率に関するより詳しい情報は、以下の法務省のウェブサイトをご参照ください。

参照:令和5年4月1日以降の法定利率について – 法務省

慰謝料が高額になるケースでは、遅延損害金も無視できない金額になることがあります。

第2の壁:裁判なしで差し押さえを可能にする「公正証書」

当事者間で作成した示談書(私文書)も法的な効力はありますが、それだけでは不払いが発生した際に、直ちに相手の財産を差し押さえることはできません。たとえ期限の利益喪失条項があったとしても、示談書が私文書のままでは直ちに強制執行はできないのが通常で、強制執行のためには判決や和解調書などの「債務名義」を得る手続が必要になります。

この問題を解決するのが「公正証書」です。特に、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」付きの公正証書を作成することが極めて重要です。

私文書の示談書と公正証書の違いを比較する図解。公正証書があれば裁判なしで強制執行できることを示している。

これは、「もし約束通りに支払わなかった場合は、直ちに強制執行(財産の差し押さえ)を受けても異議はありません」と、相手方が公証人の前で承諾する一文です。この文言がある公正証書は、確定判決と同じ強力な効力(債務名義)を持ちます。

その結果、万が一不払いが発生した場合、時間と費用のかかる裁判手続きをすべて省略し、直ちに相手の給与や預貯金といった財産を差し押さえる「強制執行」の申し立てが可能になるのです。

以前、ご自身でインターネットの雛形を使って示談書を作成し、分割払いに応じた方がいらっしゃいました。しかし、数回の支払いの後、相手からの連絡が途絶え、支払いが完全にストップ。示談書には期限の利益喪失条項はありましたが、公正証書にはしていませんでした。結局、残額を回収するためには裁判を起こすしかなく、その費用と手間を考えて泣き寝入りせざるを得ない状況になってしまいました。専門家が関与していれば、と悔やまれるケースです。

公正証書を作成する手間と費用は、将来の安心を確保するための「保険」と考えるべきでしょう。より具体的な手順については、公正証書の作成方法とメリットをご覧ください。

第3の壁:交渉で追加すべき「連帯保証人」という担保

さらに回収の確実性を高めるための交渉カードが「連帯保証人」です。分割払いを認める代わりに、相手に資力のある親族(通常は親)などに連帯保証人になってもらうよう要求します。

連帯保証人がいれば、万が一、本人からの支払いが滞った場合に、あなたは直ちに連帯保証人に対して残額全額の支払いを請求できます。これにより、回収の確実性は飛躍的に高まります。

これは、単に支払いを保証させるだけでなく、相手の家族にも事実を公にすることになるため、相手に「約束を破れない」という強い心理的プレッシャーを与える効果も期待できます。「分割でお願いするからには、それ相応の誠意を形(担保)で見せてほしい」と交渉する際の、非常に有効なカードとなるのです。

万が一支払いが止まったら?強制執行(給与差し押さえ)の流れ

これだけの対策を講じても、相手が支払いを止めてしまう可能性はゼロではありません。その場合の最終手段が、前述した「強制執行」、特に相手が会社員の場合に最も効果的な「給与差し押さえ」です。

強制執行認諾文言付きの公正証書がある場合、手続きの流れは以下のようになります。

  1. 裁判所への申し立て: 地方裁判所に「債権差押命令申立」を行います。
  2. 差押命令の発令・送達: 裁判所が申立を認めると、相手の勤務先(法律上「第三債務者」といいます)に対して「債権差押命令」を送達します。
  3. 給与からの直接支払い: 命令を受け取った勤務先は、相手に給与を支払う際、法律で定められた範囲(例:手取り額が44万円以下の場合は手取り額の4分の1まで/手取り額が44万円を超える場合は33万円を超える部分など)を天引きし、あなたに直接支払う義務を負います。

この手続きにより、相手の意思とは無関係に、勤務先から直接慰謝料を回収することが可能になります。給与を差し押さえられると、会社に事情を知られることになるため、相手にとっては非常に強力な圧力となり、任意での支払いを促す効果も期待できます。

より詳しい手順については、給与差し押さえの手続きをご覧ください。

北九州で公正証書を作成するなら|市内の公証役場ガイド

北九州市内で公正証書を作成する場合、以下の2か所の公証役場を利用することができます。どちらの役場で作成しても、法的な効力に違いはありませんので、ご自身のアクセスしやすい方を選ぶとよいでしょう。当事務所は小倉駅や平和通駅から徒歩圏内にあり、どちらの公証役場へのアクセスも良好です。

  • 小倉公証人合同役場
    所在地: 北九州市小倉北区大手町11番4号 北九州市大手町ビル5階
    電話番号: 093-571-6828
    アクセス: JR「西小倉駅」から徒歩約15分
  • 八幡公証人合同役場
    所在地: 北九州市八幡西区黒崎三丁目2番2号 菅原第二ビル5階
    電話番号: 093-641-3156
    アクセス: JR「黒崎駅」から徒歩約2分

公証役場での手続きには、事前に予約が必要な場合がほとんどです。詳細については、各役場に直接お問い合わせください。

参考:小倉公証人合同役場:福岡法務局 – 法務省

まとめ|将来のリスクを見越した示談書作成は弁護士にご相談を

不倫慰謝料の分割払いは、確かにリスクを伴います。しかし、今回解説した「期限の利益喪失条項」「遅延損害金」を示談書に盛り込み、それを「強制執行認諾文言付き公正証書」として作成し、可能であれば「連帯保証人」を立ててもらうという多重の対策を講じることで、そのリスクを法的に管理し、最小限に抑えることが可能です。

ここで最も重要なことは、これらの手続きを不備なく行うことです。ご自身で作成した示談書や、インターネット上の雛形を安易に利用した結果、法的に重要な条項が漏れていたり、文言が不正確だったりすると、いざという時に全く役に立たず、本来得られるはずだった数百万円を失う可能性があります。

どんなに完璧な書類を作成しても、相手が自己破産してしまったり、無職になってしまったりするリスクはゼロにはなりません。しかし、だからこそ、あらゆる事態を想定し、法的に取りうる最善の策を尽くしておくことが不可欠なのです。

平井・柏﨑法律事務所では、北九州市の事案に精通した弁護士が、将来起こりうるあらゆるリスクを想定した「強い示談書」の作成をサポートいたします。また、相手方から提示された示談書の内容があなたにとって不利なものでないか、専門家の視点で厳しくチェックすることも可能です。初回のご相談は無料ですので、一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。

 

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