不倫慰謝料請求を無視されたら?北九州の弁護士が次の一手を解説

不倫慰謝料の請求無視、その先にある2つの道

不倫・不貞行為に対する慰謝料請求。その正当な権利行使に対し、相手方が誠実に応じず、無視を決め込んだり、開き直ったりする事態は、残念ながら実務上決して珍しいことではありません。書面を送っても返信がなく、電話にも出ない。こうした状況に、怒りや無力感を覚えるのは当然のことです。不倫慰謝料請求の全体像については、不倫慰謝料請求の基本的な流れで体系的に解説していますが、本記事では特に「請求を無視された後」に焦点を当てます。

相手に無視されたとしても、あなたの持つ慰謝料請求権が消滅することはありません。しかし、ここから先の対応は、大きく二つに整理できます。一つは、感情に任せて直接的な行動に出てしまう違法となるリスクのある自力救済にあたる対応。もう一つは、法に則って権利の実現を目指す適法な法的手続きによる対応です。

結論から申し上げます。ご自身での直接的な取り立て行為は、名誉毀損や業務妨害といった犯罪に該当しかねない、極めて危険な選択です。事態を動かし、正当な権利を実現するためには、民事訴訟やその先にある強制執行(差押え)といった法的手続きへの移行を検討することが、適正な権利実現に向けた重要な選択肢となります。

やってはいけない行動―「自力救済」の法的リスク

相手が不誠実な態度を取るからといって、感情に任せた行動をとることは、状況を好転させるどころか、あなた自身を法的に不利な立場、ひいては加害者の立場に追い込む可能性があります。近代法における「自力救済の禁止」という大原則は、たとえ正当な権利を持つ者であっても、その権利を腕力や私的な制裁で実現してはならない、というものです。権利の実現は、必ず裁判所などの公的機関を通じて行わなければなりません。

勤務先への連絡・訪問が招く「名誉毀損罪」「業務妨害罪」

「支払いに応じないなら、会社に不倫の事実をすべて話す」—。これは非常に危険な考えです。相手の勤務先に不倫の事実を知らせたり、支払いを要求する電話をかけたりする行為は、以下の犯罪に問われる可能性があります。

  • 名誉毀損罪(刑法230条): 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為です。重要なのは、たとえ不倫の事実が真実であったとしても、この罪は成立しうるということです。不特定多数の人が知ることのできる状況(=職場)で社会的評価を低下させる事実を告げれば、名誉毀損となりえます。
  • 威力業務妨害罪(刑法234条): 威力を用いて人の業務を妨害する行為です。執拗な電話や会社への押しかけによって、相手の勤務先の正常な業務を妨げたと判断されれば、この罪に問われる可能性があります。

このような行動は、慰謝料を回収するどころか、逆に相手方から刑事告訴されたり、損害賠償請求をされたりするリスクを伴います。特に相手が公務員である場合など、その影響はさらに深刻になる可能性があります。

参照:刑法 | e-Gov 法令検索

SNSでの暴露・自宅への押しかけが問われる不法行為責任

インターネットの匿名性を利用して、SNSで相手の氏名や写真、不倫の事実を暴露する行為も同様に危険です。これはプライバシー権の侵害という不法行為(民法709条)に該当し、損害賠償責任を負う可能性が極めて高いでしょう。

また、相手の自宅に押しかけ、大声で支払いを要求したり、長時間居座ったりする行為は、態様によっては住居侵入罪(刑法130条)や脅迫罪(刑法222条)に問われることもあり得ます。たとえそれが違法な証拠収集活動と見なされるリスクもあります。

怒りを感じる状況であっても、感情的な行動によってご自身が法的責任を問われる事態を避けるため、冷静な判断が必要です。

無視された場合の次に検討すべき対応:適法な3つの選択肢

では、自力救済という危険な道を避け、法的に正しく慰謝料を回収するためには、具体的にどのような手続きを踏めばよいのでしょうか。個人名義の内容証明郵便などを無視された後の、適法な選択肢は主に以下の3つです。相手が不倫の事実自体を否定している場合か、認めているが支払わないだけなのか、状況によっても最適な選択は異なります。

選択肢1:弁護士名義での内容証明郵便による再催告

個人からの請求は無視できても、法律の専門家である弁護士が代理人として介入することで、相手の態度が軟化するケースは少なくありません。弁護士名義で内容証明郵便を送付することは、「これ以上不誠実な対応を続けるのであれば、次は訴訟という法的措置も辞さない」という、こちらの毅然とした意思を法的に伝える強力なメッセージとなります。

これは任意交渉の最終段階と位置づけられます。実務上、この段階で初めて事の重大さを認識し、交渉に応じる相手方もいます。しかし、それでもなお無視を続ける場合には、次の法的手続きへの移行を検討せざるを得ません。

選択肢2:支払督促―書面審査による手続きを検討する

支払督促とは、簡易裁判所の書記官を通じて、相手方に支払いを命じてもらう手続きです。訴訟のように法廷での尋問などはなく、書類審査のみで進みます。相手方がこの支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者は所定期間内に「仮執行宣言」の申立てをすることができます。これにより、相手方から適法な異議が出されなければ、訴訟を経ずに強制執行へ進むための手続的基礎を得られる点がメリットです。

ただし、相手方から異議が出されると、通常の民事訴訟手続きに移行します。そのため、不倫の事実や慰謝料額について争いがなく、単に支払いを無視しているようなケースで有効な手段といえるでしょう。合意内容を公正証書にしていない場合の次の選択肢としても考えられます。

選択肢3:民事訴訟の提起―強制執行を見据えた最終手段

支払督促に異議が出された場合や、当初から不倫の事実関係に争いがある場合、そして相手の態度が極めて悪質な場合には、民事訴訟を提起することになります。これが、慰謝料請求における主要な法的手段の一つです。

北九州市やその近郊(行橋市、中間市など)の事案であれば、請求額が140万円以下なら管轄の小倉簡易裁判所、140万円を超える場合は「福岡地方裁判所小倉支部」が主な舞台となります。訴訟の目的は、裁判所に不法行為の事実と損害額を認定してもらい、慰謝料の支払い義務を法的に確定させる「勝訴判決」を得ることです。この判決書が、最終手段である強制執行(差押え)を可能にする「債務名義」となるのです。

参照:福岡県内の管轄区域表

勝訴判決のその先へ:強制執行による慰謝料回収

民事訴訟で勝訴判決という「債務名義」を得たにもかかわらず、相手が支払いに応じない。その場合に初めて可能となるのが、国家権力によって相手の財産を強制的に取り立てる「強制執行」手続きです。これは、支払いに応じない相手方から慰謝料を回収するために、法律上認められた強制的な手続きです。具体的な手続きについては、給与差押えの具体的な手続きで詳しく解説しています。

差押えの対象となる財産とは(給与・預貯金など)

強制執行では、相手方の様々な財産を差し押さえることが可能です。主な対象は以下の通りです。

  • 給与債権: 相手の勤務先から支払われる給与や賞与。一度手続きをすれば、慰謝料全額が回収できるまで、原則として毎月継続的に差し押さえが可能です。安定した勤務先がある相手には、極めて有効な手段となります。
  • 預貯金債権: 相手が保有する銀行や信用金庫などの預貯金口座。
  • 不動産: 相手名義の土地や建物。
  • 動産: 自動車や貴金属など。

特に給与の差押えは、裁判所から勤務先に直接通知が届くため、支払いを無視し続けてきた相手方に対して、社会的・心理的に強い圧力をかける効果も期待できます。

不倫慰謝料請求を無視された場合の法的措置の流れを示す図解。弁護士名義の催告から始まり、支払督促、民事訴訟、そして最終手段の強制執行(給与差押え)へと進む4つのステップが示されている。

【重要】法的手続きの限界と回収の現実

ここで、専門家として誠実にお伝えしなければならない重要な現実があります。それは、法的手続きは万能ではない、ということです。たとえ訴訟で勝訴判決を得て強制執行の権利を手にしたとしても、相手方に差し押さえるべき財産(給与、預貯金など)が全く存在しなければ、現実的に慰謝料を回収することは極めて困難になります。

弁護士名義での請求に切り替えることで相手が態度を軟化させるケースがある一方で、相手が職を転々としていたり、財産を隠匿していたりする場合、時間と費用をかけて判決を得ても、結果的に回収できず「費用倒れ」に終わってしまうリスクもゼロではありません。相手が自己破産を申し立てる可能性も考慮に入れる必要があります。法的手続きに踏み切るかどうかは、この回収の現実を冷静に見極めた上で判断することが肝要です。

請求無視と慰謝料回収に関するQ&A

Q. 内容証明を無視されました。確実に慰謝料を回収できますか?

A. 結論として、確実に回収できると断定することはできません。

法的な理由として、慰謝料の回収は、最終的に相手方の支払能力(資力)に完全に依存するためです。訴訟を提起して勝訴判決を得れば、給与や預貯金といった財産を差し押さえる「強制執行」の権利を得られますが、これはあくまで権利です。大前提として、相手方に差し押さえるべき安定した収入や財産が存在していなければ、権利を取得しても、実質的な回収は困難となります。したがって、訴訟に踏み切るか否かは、お手元の証拠の強さと相手方の資力の双方から、費用対効果を客観的に評価した上で判断する必要があります。

Q. 相手が電話に出ません。職場に電話してもよいですか?

A. 結論として、絶対にお控えください。

法的な理由として、裁判所を通じた強制執行という正当な法的手続きを経ずに、ご自身の判断で相手の職場に連絡し、不倫の事実を告げたり支払いを要求したりする行為は、名誉毀損罪や威力業務妨害罪に該当する可能性があります。慰謝料を請求する側であるはずのあなたが、逆に不法行為責任を問われ、損害賠償を請求されるという、本末転倒の事態を招く重大なリスクがあります。権利の実現は、必ず法に則った手続きで行わなければなりません。これは職場不倫のケースであっても同様です。

Q. 請求を放置し続けると、どうなりますか?

A. (請求された方向け)最終的に財産を差し押さえられる可能性があります。

請求を無視し続けると、事態は段階的に悪化していく可能性が高いです。まず、弁護士から催告書が届き、それでも無視を続けると民事訴訟を提起されることが考えられます。裁判所の呼び出しにも応じなければ、相手方の主張が全面的に認められた判決(欠席判決)が下され、その判決に基づいて、あなたの給与や預貯金口座が強制的に差し押さえられるという結末に至る可能性があります。また、判決で命じられた支払いが遅れれば、遅延損害金が加算され、支払うべき総額は時間と共に増えていきます。内容証明郵便が届いた時点で、誠実に対応し、専門家へ相談することが、ダメージを最小限に抑えるための賢明な判断といえるでしょう。

北九州で次に検討すべき対応をご検討の方へ:当事務所の対面相談

不倫慰謝料の請求を無視され、法的手続きへの移行を真剣にご検討されているとき、最も重要になるのが「客観的な見通し」です。感情的な勢いだけで訴訟に踏み切るのではなく、証拠の法的な評価と、強制執行を見据えた相手方の資力の見極め、それらに基づく費用対効果の冷静な分析が不可欠となります。

法律事務所で弁護士に相談する女性。証拠資料を見ながら法的な見通しについて説明を受けている。

法的評価に不可欠な証拠の対面確認

この極めて重要な法的評価は、お電話やオンラインでのやり取りでは不可能です。訴訟の勝算や差押えの実現可能性を正確に判断するためには、LINEのやり取り、写真、音声データ、探偵の調査報告書といった証拠資料そのものを、弁護士が直接目で見て、その法的な意味合い(推認力)を精密に分析するプロセスが欠かせません。画面越しの確認や口頭でのご説明だけでは、この厳密な評価は困難です。

だからこそ、当事務所では、訴訟や差押えの費用対効果を正確に評価するため、必ず小倉北区の事務所へご来所いただき、お手元の証拠や事実関係を対面で慎重に確認させていただいた上で、客観的な法的見通しをご提示することを原則としております。

ご相談のご予約について

不倫慰謝料の請求を無視され、次の一手として法的手続きをご検討されている方は、まずはお電話にて、ご来所相談の日時をご予約ください。法的手続きの要否や回収可能性について、証拠と相手方の資力を踏まえて具体的に検討することが重要です。

平井・柏﨑法律事務所
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