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1回だけの不倫、慰謝料は法的にどう扱われるのか
「たった1回だけ」という配偶者の不貞行為が発覚したとき、慰謝料を請求する側も、請求される側も、その法的な扱いについて大きな戸惑いを覚えることは少なくありません。「一度きりの過ち」という言葉を前に、請求をためらったり、あるいは法外な金額を請求されたりと、当事者間の認識に著しいズレが生じやすいのがこの問題の難しい点です。
まず、法律上の結論から申し上げます。たとえ1回(一度きり)であっても、配偶者以外の人と肉体関係を持てば、それは法的に「不貞行為」という不法行為に該当し、慰謝料請求の対象となり得ます。回数の多寡は、不法行為の成立自体を左右するものではありません。
ただし、実務上は金額の算定が重要な問題となります。不貞行為の「回数」は、慰謝料の金額を算定する上で、婚姻関係に与えた影響の大きさを測る重要な考慮要素の一つとして評価されるのです。つまり、1回きりという事実は、慰謝料の減額事由として主張される可能性がある一方で、他の事情によっては必ずしも低額に収まるとは限りません。
この記事では、1回だけの不倫という特殊な状況が、慰謝料の金額や立証の難易度にどのように影響するのか、請求する側・される側双方の視点から、弁護士が法的な観点に基づき客観的に解説します。感情的な対立を避け、適正な解決を目指すための一助となれば幸いです。なお、不倫慰謝料に関する一般的な誤解については、別の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
慰謝料額への影響と「1回きり」の立証の壁
「1回だけ」という事実が、慰謝料請求の具体的な局面でどのように作用するのか。ここでは、慰謝料額の算定と、法的な立証という二つの重要な側面から、その影響を専門的に掘り下げていきます。
回数の少なさは慰謝料の減額要素として考慮される傾向
不倫の慰謝料は、裁判実務上、離婚に至る場合は100万円~300万円、離婚しない場合は50万円~150万円程度が一つの目安とされています。この金額は、不貞行為の期間、頻度、悪質性、婚姻期間の長さ、当事者の年齢や社会的地位など、様々な要素を総合的に考慮して判断されます。
この点、1回限りの不貞行為は、長期間にわたる継続的な関係と比較して「婚姻共同生活の平穏を害した程度が低い」と評価され、慰謝料額は相場の中でも低額になる傾向が見られます。
しかし、「1回=必ず安くなる」という単純な図式が成り立つわけではありません。例えば、以下のような事情がある場合は、1回きりであっても慰謝料が高額になる可能性があります。
- その1回の不貞行為が直接的な原因となって、長年連れ添った夫婦が離婚に至った場合
- その1回の不貞行為によって不倫相手が妊娠・出産した場合
- 不貞行為の態様が極めて悪質であった場合
このように、慰謝料額は回数のみで決まるものではなく、あくまで事案の全体像の中から総合的に評価されるということをご理解ください。

立証の難しさと早期示談による解決の合理性
1回きりの不貞行為をめぐる紛争で、もう一つの大きな課題となるのが「立証」の難しさです。
継続的な不倫関係であれば、頻繁なLINEのやり取り、複数のデート写真、ホテルの領収書の束など、肉体関係を推認させる証拠が複数見つかるケースが多いでしょう。しかし、1回だけの関係では、客観的な証拠が極めて乏しい、あるいは全く存在しないという事案も少なくありません。
裁判になった場合、慰謝料を請求する側が、不貞行為(肉体関係)の存在を証拠に基づいて立証する責任を負います。証拠が不十分な場合、相手方が事実を否定すれば、裁判所に不貞行為の存在を認めてもらうハードルは非常に高くなります。
この「立証の壁」を踏まえると、もし当事者間で不貞の事実自体に争いがないのであれば、双方にとって合理的な選択肢が見えてきます。それは、時間と費用、そして何より多大な精神的負担を伴う裁判手続きを避け、早期に示談交渉で解決を図ることです。請求する側にとっては立証の困難さを回避でき、請求される側にとっては紛争の長期化や公開の法廷での尋問といったリスクを避けられるため、双方に経済的合理性が働きやすいのです。この交渉プロセスでは、弁護士費用を考慮した交渉も重要になります。
【立場別】1回の不倫をめぐる慰謝料Q&A
ここでは、1回きりの不倫問題でよく寄せられるご質問について、請求する側・される側それぞれの立場からQ&A形式でお答えします。

【請求する側】夫が1回だけ不倫。慰謝料は請求できますか?
A. ご請求は可能です。
法律上、特定の相手と1回でも肉体関係を持てば、それは婚姻共同生活の平穏を侵害する不法行為(不貞行為)が成立します。相手が特定の一般女性である場合、その女性に対しても慰謝料を請求することが法的に可能です。なお、相手が風俗店の従業員である場合も、関係の態様や継続性などによって法的評価が分かれるため、個別事情に即した検討が必要です。
ただし、前述のとおり、継続的な不倫関係に比べると、算定される慰謝料額は低くなる傾向にあります。また、1回きりの場合は証拠が乏しいケースも少なくなく、相手が事実を争った場合には、法的な立証が困難になる可能性も視野に入れなければなりません。万が一、慰謝料請求を無視された場合の次の手立ても含め、お手元にある証拠で法的にどこまで主張できるのか、慎重な評価が必要です。
【請求される側】1回の関係で300万円を請求されました。全額払うべきですか?
A. 必ずしも請求額全額を支払う義務があるとは限りません。
お酒の勢いであったとしても、既婚者と肉体関係を持ったのであれば、法的な責任を免れることは困難です。しかし、請求された300万円という金額が、法的に見て妥当であるかは別の問題です。
1回限りの不貞行為は、慰謝料の算定において明確な減額要素として考慮されるのが通常です。離婚に至っていない場合、300万円という請求額は、裁判実務上の相場に照らして著しく高額であると評価される可能性が高いでしょう。もちろん、個別の事情にもよりますが、感情的に提示された金額を鵜呑みにする必要はありません。
このような場合、弁護士を通じて相手方と交渉し、事案に見合った適正な金額での解決を目指すことが賢明な対応と言えます。交渉次第では、分割払いなどの支払い方法についても協議することが可能です。
北九州で適正な解決を目指すなら、まず弁護士へご相談を
1回限りの不倫事案は、法律論だけでなく、証拠の評価や交渉の進め方といった実務的な知見が解決の質を大きく左右します。「1回だから責任は軽い」と考える被請求者と、「1回でも許せない」と考える請求者。この両者の隔たりを埋め、客観的な事実と法的な評価に基づいて適正な解決点を見出すことが、私たち弁護士の役割です。
請求する側にとっては「1回の場合は相場より低くなる可能性がある現実と立証の壁」を、請求される側にとっては「1回でも不法行為責任は免れず、事情によっては高額になり得る現実」を、それぞれ誠実にお伝えし、中立的な立場から客観的な解決へと導きます。
証拠の精査と客観的な見通しのために「対面相談」を
1回限りの不倫事案の解決において、最も重要となるのが、証拠の法的な評価と、事案の全体像を踏まえた慰謝料額の客観的な見通しです。
「お手元の証拠が、肉体関係を法的に推認させる上でどれほどの力を持つのか」「全体の事情を総合考慮した場合の適正な慰謝料額はいくらか」といった重要な判断は、お電話やオンラインでの断片的な聞き取りだけで下すことはできません。不確かな情報に基づくアドバイスは、かえってご相談者様の不利益になりかねないからです。
だからこそ当事務所では、事案の全体像を正確に把握し、適正な解決スキームを立案するため、必ず小倉北区の事務所へご来所いただいております。お手元の証拠資料(LINEのやり取り、写真、領収書など)を弁護士が直接拝見し、対面でじっくりとお話を伺った上で、客観的な法的見通しをご提示いたします。行橋市や中間市など、北九州市外にお住まいの方も、まずは一度、ご相談ください。一人で抱え込まず、専門家と共に冷静な一歩を踏み出すことが、適正な解決を検討するために重要です。

平井・柏﨑法律事務所は、北九州市を中心に福岡県内の離婚・男女問題に特化した法律事務所です。
財産分与や慰謝料請求、親権、養育費など、複雑な法律問題を数多く解決してきた豊富な実績とノウハウが強みです。
特に、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案することで、不安な気持ちを和らげ、未来へ踏み出すお手伝いをいたします。
また、複数の男女弁護士が在籍しているため、ご希望に応じて話しやすい弁護士が担当することも可能です。
離婚や男女問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせください。
