マッチングアプリ不倫と独身偽装|北九州の弁護士が解説

マッチングアプリ不倫に潜む「独身偽装」という法的問題

近年、マッチングアプリは出会いの手段として広く普及しましたが、その利便性の裏で、既婚者が独身と偽って登録し、交際に至るという事案が後を絶ちません。このような「独身偽装」を伴う不倫は、単なる男女間の感情的な問題に留まらず、法的に評価すべき複数の問題を内包しています。

この事案では、不倫をされた配偶者だけでなく、独身だと騙されていた交際相手もまた「法的な被害者」となり得る複雑な構造を持っています。それぞれの立場から、主観的な感情ではなく、客観的な事実に基づき、適正な法的評価を行う必要があります。

不倫・不貞行為に関する慰謝料請求の全体像については、不倫・不貞・浮気の慰謝料請求をしたい方へで体系的に解説しています。

誰が誰に請求できるか?法的構造の体系的整理

マッチングアプリを介した不倫・独身偽装トラブルでは、誰が、誰に対して、どのような法的根拠に基づいて請求できるのか、その関係性が複雑に絡み合います。ここでは、当事者それぞれの立場から、慰謝料請求の構造を整理して解説します。

【配偶者から交際相手への請求】慰謝料が認められる要件

配偶者が不倫をした場合、その裏切られた配偶者は、不倫相手に対して精神的苦痛を理由とする慰謝料(不法行為に基づく損害賠償請求)を求めることが考えられます。

しかし、この請求が法的に認められるためには、不倫相手に「故意」または「過失」があったことが必要です。つまり、相手が「既婚者であると知っていた(故意)」、あるいは「通常求められる注意を払えば既婚者だと気づけたはずだ(過失)」と法的に評価されなければなりません。

マッチングアプリのケースでは、交際相手から「独身者向けのサービスだと信じていた」という反論がなされることが少なくありません。実際に、アプリの利用規約等で既婚者の利用が禁止されている場合、この主張が認められ、過失が否定される可能性も十分にあります。もっとも、交際期間の長さや、土日は会えない、自宅を教えないといった交際中の不審な点から、既婚者であることを疑うべき状況にあったと判断されれば、過失が認定される余地もあります。

マッチングアプリ不倫における慰謝料請求の2つのパターンを図解。配偶者から交際相手への請求は「故意・過失」が要件であり、騙された交際相手から既婚者への請求は「貞操権侵害」が根拠となることを示している。

【騙された交際相手から既婚者への請求】貞操権侵害とは

一方で、独身であると騙されて交際し、肉体関係を持った側もまた、法的に保護されるべき被害者です。この場合、既婚者本人に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

その法的根拠となるのが「貞操権の侵害」です。貞操権とは、誰と性的関係を持つかを自らの意思で自由に決定する権利を指します。相手が独身であると信じていたからこそ肉体関係に応じたのであり、もし既婚者と知っていれば関係を持たなかったであろう、という状況は、この自己決定権が違法に侵害された状態といえます。

独身であると偽る行為は、相手の自由な意思決定を妨げるものであり、具体的事情によっては、これによって受けた精神的苦痛について、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料を請求することが認められる場合があります。より具体的な、肉体関係を推認させる客観的証拠の集め方については、性交渉の証拠なしで慰謝料請求できる?北九州の弁護士が解説をご覧ください。

当事務所の専門的見解:法的評価の重要ポイント

マッチングアプリが関わる不倫・独身偽装トラブルは、従来の不倫問題とは異なる特有の難しさを含んでいます。ここでは、当事務所が実務上重視している法的評価のポイントを解説します。

デジタル証拠の評価と実務上の留意点

マッチングアプリのプロフィール画面やメッセージのやり取りは、慰謝料請求の可否を判断する上で極めて重要な証拠となります。しかし、単にスクリーンショットを保存しておけば十分というわけではありません。

実務の現実として、マッチングアプリ(特に婚活・恋活目的のサービス)の多くは、利用規約等で既婚者の利用を禁止したり、登録時に独身であることの誓約を求めたりする設計が採られているため、「既婚者だと知らなかった」という交際相手の主張(過失の否定)が認められやすい傾向にあることは否定できません。だからこそ、相手の主張を覆すだけの客観的な証拠、例えば「休日はいつも家族サービスを理由に会えなかった」「自宅や職場を決して教えなかった」といったメッセージのやり取りや、交際中の具体的な行動記録が重要性を増します。これらの証拠の法的な価値を正確に評価することが不可欠です。

アプリの登録状況、メッセージの全履歴、交際期間といった断片的な情報から「過失の有無」という法的な評価を導き出す作業は、極めて専門的な判断を要します。そのため、お電話口での簡単な聞き取りだけで見通しをお伝えすることはできません。当事務所では、小倉北区の事務所にご来所いただき、お手元のスマートフォンや保存された記録を直接拝見し、慎重に事実確認を行うプロセスを重視しております。

法律事務所で弁護士に相談する女性。スマートフォンの画面を見せながら、マッチングアプリの証拠について真剣な表情で話している。

「過失」の認定と「貞操権侵害」をめぐる法的論点

この問題の核心は、当事者それぞれの立場から、異なる法的論点を正確に検討することにあります。

まず、配偶者から交際相手への請求においては、慰謝料が認められるには、相手方に「既婚者だと知っていた(故意)」、または「注意すれば気づけたはずだ(過失)」という要件が必要です。この「過失」の有無が最大の争点となり、安易な事実認定は禁物です。

一方で、独身と偽られた交際相手から既婚者本人への請求においては、異なる法理が適用されます。独身であると偽り、将来の結婚を期待させるなどして肉体関係を持つ行為については、具体的事情によっては、交際相手の「性的自己決定権(貞操権)」を侵害する不法行為に該当すると判断され、既婚者本人がその精神的苦痛に対する慰謝料の支払い義務を負うと認められる場合があります。この二つの法的構造を混同せず、それぞれの立場で主張と立証を尽くすことが重要です。

参照:民法 | e-Gov 法令検索

アプリ不倫と慰謝料に関するご質問(Q&A)

ここでは、マッチングアプリを介した不倫・独身偽装トラブルに関して、当事務所によく寄せられるご質問に回答します。

Q.【配偶者側】夫がアプリで不倫。相手は「既婚者と知らなかった」と主張していますが、慰謝料請求は不可能ですか?

A. 相手女性に過失(注意義務違反)が認められなければ、法的な慰謝料請求は困難です。

法的理由として、マッチングアプリ(特に婚活・恋活目的のサービス)の多くは独身者の利用を前提に設計され、利用規約等で既婚者の利用を禁止したり独身誓約を求めたりしているため、相手女性の「独身だと信じていた」という主張が一定の合理性を持つと評価されやすい傾向にあります。

ただし、請求の可能性が全くないわけではありません。交際期間の長さ、夫の生活状況(例えば、左手の指輪の跡があった、会話の中に子どもの存在をうかがわせる発言があった等)といった具体的な事情から、「既婚者だと疑うべきであった」と法的に評価できる証拠があれば、相手の過失を理由に慰謝料請求が認められる余地はあります。

Q.【交際相手側】結婚を約束した相手が既婚者でした。相手の妻から内容証明が届き、どうすればよいかわかりません。

A. ご自身が相手を既婚者だと知らず、また、知らなかったことに過失がないと評価される場合、相手の奥様への支払い義務は生じません。同時に、具体的事情によっては、独身と偽った相手男性に対して「貞操権侵害」を理由とする慰謝料請求が可能となる場合があります。

パニックになられるお気持ちは察しますが、まずは冷静に行動することが肝要です。相手のプロフィール画面のスクリーンショット、結婚を約束した際のメッセージ履歴など、ご自身の主張を裏付ける証拠を速やかに保全してください。その上で、直ちに弁護士へご相談いただくことをお勧めします。相手から内容証明郵便が届いた場合の正しい初動対応が、その後の展開を大きく左右します。

北九州市で独身偽装トラブルの法的評価をご希望の方へ

マッチングアプリを介した不倫・独身偽装トラブルは、当事者間の複雑に絡み合う権利・義務関係を、「誰が誰に対して、どのような法的根拠で請求できるか」という客観的な視点から整理し、冷静に分析する必要があります。

請求する配偶者には「相手が無過失であれば請求が棄却される現実」を、そして、独身と偽られた交際相手には「貞操権侵害を立証するための証拠収集の重要性」を、それぞれ誠実にお伝えすることが、法曹としての責務であると考えております。

事案の法的評価を正確に行うためには、アプリのプロフィール画面、メッセージ履歴、交際中の行動記録など、客観的な資料の詳細な確認が不可欠です。当事務所では、証拠の推認力を正確に見極めるため、お電話やオンラインでのご相談は承っておりません。必ず小倉北区の当事務所へ直接ご来所いただき、お手元の記録を対面で確認させていただいた上で、今後の客観的な法的見通しをご提示いたします。

お一人で悩まず、まずは一度、ご相談ください。


最終更新日:2026年5月25日
監修:弁護士 平井章悟(福岡県弁護士会所属/平井・柏﨑法律事務所)

 

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0934823680 問い合わせバナー