不貞(不倫)慰謝料の裁判例の紹介(不貞相手が夫の子を2度妊娠し、2度とも中絶していた場合の慰謝料額)

1 本事案の概要

ご紹介する裁判例は、東京地方裁判所平成24年6月19日判決です。

不貞(不倫)相手であるYは、夫であるAの子を2度妊娠し、2度とも中絶していました。YはAとの不貞行為以外にも、Aの妻であるXの自宅の固定電話やXの携帯電話等に対する無言電話等の執拗かつ悪質な嫌がらせ行為をしていました。

そのため、Xは、Aの不貞(不倫)相手であるYに対して400万円の慰謝料を請求しました。なお、本裁判中にXとAとの離婚が成立していました。

2 認容された慰謝料額

170万円

3 算定にあたって考慮された事情

⑴ 増額事情

・Yは、Aが結婚していことを認識しながら、Aの求めに応じて性的関係を持つに至ったこと

・YとAの不貞期間が約4年(平成18年7月から平成22年6月1日まで)に及ぶこと

・平成18年11月2日及び平成19年7月29日にAの子を中絶していること

・平成19年11月16日にYがAに暴行を受けた以降、Yは、Aに対して関係の終了を切り出したものの、Aがこれを受け入れなかったため、なお自らの意思でAとの関係を継続したものであることは否定できないこと

・不貞行為以外にも、Yは、平成21年以降、Xの自宅の固定電話やXの携帯電話等に対する無言電話、手袋の投げつけ行為その他の執拗かつ悪質な嫌がらせ行為をしたこと

・XがAとYとの間の不貞関係を認識するに及んで、XとAとの夫婦関係の破綻は決定的となったこと

⑵ 減額事情

・Yが、平成19年11月16日から平成22年6月1日までの間、Aとの間で性的関係を継続したのは、Aから、同関係を継続するよう懇願されたり脅迫的言辞を用いられたりしたためであるという面もあること

・Yは、Aから、勤務先への来訪、自宅周辺での待ち伏せ、携帯電話等への執拗な架電といった被害を受けており、精神的にも相当疲弊していたこと

・YのXに対する前記嫌がらせ行為は、Yに対して甘言を弄しながら一向にそれを実現しないAに対する強い苛立ちや、Xに対する嫉妬心の現れであること

4 弁護士からのコメント

不貞(不倫)相手が夫の子を2度妊娠し、2度とも中絶していただけでなく、妻に対して執拗かつ悪質な嫌がらせ行為をし、離婚にまで至らせたという増額事情がありながら、170万円という慰謝料額は、低い印象を受けます。

しかし、本事案は、不貞(不倫)関係に至った経緯等について、夫(A)に多大な責任があるという事情もあり、非常に特殊な事案であったことから、そのような事情が慰謝料金額に影響を与えたと考えられます。

よって、本事案のような特殊な事情がない不貞行為による慰謝料請求の場合、不貞(不倫)相手の妊娠や中絶、執拗な嫌がらせ等の事情は、一般的に慰謝料金額を増額させる事情といえるでしょう。

 

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