不貞(不倫)慰謝料の裁判例の紹介(夫が自宅において妻と密会中の不貞相手と鉢合わせた場合の慰謝料額)

1 本事案の概要

 ご紹介する裁判例は、東京地方裁判所平成22年12月21日判決です。

 不貞(不倫)相手であるYは、妻Aと約3年間にわたり不貞行為を重ね、その間に夫Xが自宅においてAと密会中のYと鉢合わせたこともありました。その結果、XA夫婦は別居に至り、Xは、Aの不貞(不倫)相手であるYに対して300万円の慰謝料を請求しました。

2 認容された慰謝料額

  180万円

3 算定にあたって考慮された事情

 ⑴ 増額事情

・YがAと不貞行為に及んだことによって、AとXとの婚姻関係は破綻したこと

・平成18年5月ころから平成21年4月ころまでの約3年間という長期間にわたるものであること

・YとAは、平成19年ころ、夜にXとAの自宅で会っており、Aが、同所の浴室にてシャワーを浴びて いたところ、Xが帰宅してYと遭遇し、Yは、Xから直ちに出て行くように告げられて、同所を立ち去ったこと

 ⑵ 減額事情

・XとAとの間の婚姻関係には、性的交渉が少ないという問題があることについて夫婦間の共通認識があったこと

4 弁護士からのコメント

 本事案においては、YとAの不倫(不貞)により、XA夫婦の婚姻関係は破綻するに至りました(なお、判決時点においてXとAは離婚していないようですが、裁判所は破綻したと認定しています。)。

 不倫や浮気(不貞)により夫婦関係が破綻するに至った場合の慰謝料はとしては、150万円前後が基準となることが多い印象です。また、本件においては、XとAの夫婦関係には問題があったという減額事情がありました。

 そうすると、180万円という慰謝料額は、相場と比べると高額であり、具体的な加算額は不明ではありますが、夫が自宅において妻と密会中の不倫(不貞)相手と鉢合わせたという特殊事情を裁判所が重く見たということができます。これは、不倫(不貞)相手と自宅で鉢合わせることによる精神的苦痛は甚大であると考えられることからすれば、相当な判断だと考えられます。

 このように、自宅において配偶者と密会中の不倫(不貞)相手と鉢合わせたという事情は、慰謝料の増額事情になるといえるだけでなく、鉢合わせた際の事情(行為中であったか等)も影響を与えるものと考えられます。

 

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