不貞(不倫)慰謝料の裁判例の紹介(不貞行為以前から夫婦関係が相当程度冷却化、悪化していた場合の慰謝料額)

1 本事案の概要

  ご紹介する裁判例は、東京地方裁判所平成21年8月31日判決です。

夫Aは妻Xに対して、婚姻前に交際していた女性と生活するため離婚したいと言い出したことがありましたが、XとAは離婚しませんでした。その後、AとYが不貞関係を持ったことが発覚し、XA夫婦は離婚するに至りました。そのため、Xは、Aの不貞(不倫)相手であるYに対して慰謝料300万円の請求をしました。

2 認容された慰謝料額

  60万円

3 算定にあたって考慮された事情

 ⑴ 増額事情

  ・特になし

 ⑵ 減額事情

・XとAの夫婦関係は、AとYが知り合う前である平成12年ころから冷却化しており、必ずしも円満、良好なものであったとはいえず、XとAが離婚するに至った主たる原因は、冷却化していたXとAの夫婦関係や家族関係にあったこと

・このような家族関係に悩んでいたAが、職場での勤務条件等の調整を契機にYに家族の問題を相談する等し、相談に乗っていたYがAと不貞関係を持つに至ったこと

・Yの不貞行為が、XA夫婦が離婚した主たる原因とまではいえないものの、他方で、Yとの不貞行為が離婚に至る要因の一つであり、契機となったこと

・AとYとの関係は一過性のものであって、現在、職場の上司としての関係を超える交際もなく、Aも、Yとそれ以上の関係を望んでいないこと

4 弁護士からのコメント

 本事案において、Yとの不貞(不倫)があった後、XA夫婦は離婚しました。不倫や浮気(不貞)を理由に離婚に至った場合の慰謝料額については、過去の裁判例などからすると150万円前後になることが多いです。
 そうすると、本事案における60万円という慰謝料額は、離婚した場合の慰謝料額としては低額であるとも考えられます。

 この点、不倫や浮気(不貞)が原因で離婚するに至った場合に慰謝料額が上記のような金額になるのは、不貞(不倫)が「原因」で離婚にまで至ってしまったから、すなわち、精神的な苦痛がそれだけ大きいといえるからです。

 しかし、本事案において、XとAの夫婦関係は、既に相当程度冷却化しており、Yの不貞行為は、離婚の要因の一つでしかないため、不倫や浮気(不貞)が原因で離婚する場合と比べて精神的苦痛は大きくないといえます。

 裁判所は特にこの点を重視し、本事案における慰謝料額を認定したものと考えられます。もっとも、不倫や浮気(不貞)が離婚の直接的な原因となったのか、それとも要因の一つにすぎないのかといった判断については明確な基準があるわけではなく、事案ごとに判断していかなければならないものです。

 そのため、このような点についてお悩みの方は、離婚・男女問題に注力する弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

 

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0934823680 問い合わせバナー