1 本事案の概要
ご紹介する裁判例は、東京地方裁判所平成20年12月26日判決です。
原告である妻は、いわゆる里帰り出産のため実家に帰省していました。しかし、夫は、職場の同僚女性(以下「A」といいます)に対して、別居中で離婚予定であると告げ、その旨誤信したAと不貞行為に及びました。
そのため、妻は、夫の不貞(不倫)相手であるAに対して300万円の慰謝料を請求しました。なお、本裁判中に妻と夫との離婚は成立していませんでしたが、妻は、夫に対して離婚を求めており、実質的に婚姻関係が破綻している状態でした。
2 認容された慰謝料額
100万円
3 算定にあたって考慮された事情
⑴ 増額事情
・Aと夫との不貞行為が、原告と夫との婚姻関係破綻の原因なっていること
・Aと夫が、原告が子どもを出産して間もない時期に不貞行為に及んでいること
⑵ 減額事情
・Aは、原告と夫との婚姻関係が破綻しているものと認識し、夫との交際を開始したこと
・原告と夫との婚姻期間が約7か月と短いこと
・Aと原告との不貞期間が約3か月と短いこと
4 弁護士からのコメント
不貞行為の継続期間、婚姻期間の長さといった事情は、慰謝料金額を決める際によく考慮される事情であり、本事案においても、それぞれの期間が短いことが減額事情として考慮されています。
もっとも、このような減額事情はありますが、婚姻関係が破綻している事案としては100万円という慰謝料額は低い印象を受けます。
本事案がこのような慰謝料額となったのは、やはり不貞(不倫)相手が夫の言動により、別居中で離婚予定であると誤信したという特殊性があったからだと考えられます。