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夫婦間で交わした「不倫の誓約書」に潜む法的リスク
配偶者の不倫が発覚した後、関係の修復や再発防止を目的として、「次に不倫をしたら金銭を支払う」「離婚に応じる」といった内容の誓約書(念書)が夫婦間で交わされることは少なくありません。裏切られた側の精神的苦痛は計り知れず、二度と同じ過ちを繰り返させないために、何らかの形で約束をさせたいと考えるのは自然な感情でしょう。
しかし、この記事で最も重要な点として先にお伝えしたいのは、その誓約書は、法的に万能ではないということです。
たとえご本人の署名・捺印があったとしても、記載された条件が法外なものであったり、作成された際の状況に問題があったりする場合、裁判実務においてその効力がそのまま認められるとは限りません。感情的な対立の中で作成された私的な書面は、当事者が意図した通りの効果を持たない可能性があるのです。このテーマの全体像については、「不倫・不貞・浮気の慰謝料請求をしたい方へ」で体系的に解説しています。
本稿では、どのような場合に誓約書の効力が無効、あるいは減額される可能性があるのか、その法的な理由を専門家の視点から冷静に解説いたします。
誓約書の効力が無効・減額となりうる3つの法的理由
なぜ、当事者双方が合意したはずの誓約書の効力が絶対ではないのでしょうか。それには、法律上の明確な根拠が存在します。ここでは、誓約書の有効性を判断する上で特に重要となる2つの法的理由について、具体的なケースを交えながら解説します。
1. 内容が社会の常識を逸脱している場合(公序良俗違反)
当事者間でどのような内容の契約を結ぶかは、原則として自由です。しかし、その内容が社会の一般的な道徳観念や秩序に反する場合には、その契約は法的な保護を受けられません。これを定めているのが、民法第90条の「公序良俗違反」です。
不倫の誓約書において問題となりやすいのは、以下のような条項です。
- 「次に不倫をしたら慰謝料として3000万円支払う」といった法外な金額の慰謝料
- 「離婚する際には全財産を譲渡する」といった経済的自由を著しく奪う内容
- 「親権を無条件で放棄する」といった子の福祉を無視した内容
これらの内容は、たとえ当事者が感情的に合意したとしても、個人の生存権や経済活動の自由を過度に制約し、社会的な妥当性を欠くものと判断される可能性が高いです。そのため、裁判所はこれらの条項を公序良俗に反するものとして無効と判断したり、不倫慰謝料の客観的な相場を大きく逸脱する部分を減額したりすることがあります。当事者間で作成した誓約書は、内容が不明確であったり、法外な条件が記載されていたりすることが多く、実際の裁判においてそのままの効力が認められないケースが実務上は少なくありません。
2. 強迫や錯誤など、作成時の意思に問題がある場合
契約が有効に成立するためには、当事者が自由な意思に基づいて合意していることが大前提となります。もし、誓約書を作成した際の意思表示に「瑕疵(かし)」、つまり法的な欠陥があれば、その効力は否定される可能性があります。
例えば、以下のような状況で書面に署名・捺印をさせられた場合です。
- 密室で長時間にわたり感情的に非難され、精神的に追い詰められた末に署名した。
- 「署名するまでここから出さない」といった威圧的な言動を受け、恐怖心からやむなく署名した。

このような状況下でなされた意思表示は、民法第96条の「強迫による意思表示」に該当し得て、後から取り消すことができる可能性があります。また、不倫の事実について重大な誤解があった場合(錯誤)なども同様です。重要なのは、冷静な判断ができない状況で無理やり書かせた書面は、法的に有効な合意とは認められにくいという点です。不倫の事実を認めない相手方に対して、感情的に問い詰めて誓約書を書かせる行為は、かえってその書面の効力を失わせるリスクを伴います。適法に効力を持たせるためには、専門家を通じて示談書として整理したり、公正証書化を検討したりすることが有力です。
【立場別】不倫の誓約書に関するよくあるご質問
ここでは、不倫の誓約書を巡る具体的なご質問について、「書かせた側」「書いた側」それぞれの立場から、法的な見解を解説します。
Q.【書かせた側】「次に不倫したら1000万円払う」という念書は有効ですか?
【結論】
ご請求自体は可能ですが、1000万円全額が法的に認められる可能性は低いと考えられます。
【法的理由】
不法行為(不倫)に対する慰謝料には、裁判実務上の客観的な相場が存在します。それを著しく超える違約金(ペナルティ)の設定は、前述した「公序良俗違反」として、その全額または一部が無効と判断される可能性が高いです。仮に訴訟となった場合、裁判所は、不貞行為の態様や婚姻期間、離婚に至ったか否かなどの諸事情を考慮し、適正な賠償額を認定します。その結果、念書に記載された金額から大幅に減額されることがあり、離婚に至った事案でも200万円前後とされる例がみられます。不倫慰謝料が高額になるケースもありますが、念書の記載のみを根拠に法外な請求が認められるわけではありません。お手元の念書の有効性を正確に判断するには、専門家による個別の法的評価が必要です。
不倫慰謝料の適正な相場と算定基準については不倫慰謝料の適正な相場と算定基準の解説ページで詳しく解説しています。
Q.【書いた側】「離婚時は全財産を譲る」と書かされました。すべて失いますか?
【結論】
直ちにすべてを失うわけではありません。その合意の有効性は法的に争う余地があります。
【法的理由】
離婚時の財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を公平に清算する制度であり、実務上は2分の1を基本として検討されることが多いです。慰謝料とは法的な性質が異なります。そのため、「全財産を譲る」という合意は、財産分与請求権という重要な権利を一方的に放棄させるものであり、その有効性は裁判所で厳しく判断されます。

特に、相手に問い詰められパニックになった状態で書かされたのであれば、「強迫による意思表示の取消し」を主張できる可能性があります。仮に不倫の事実があり、慰謝料の支払い義務を負うとしても、それは適正な財産分与とは法的に別個の問題として、それぞれ適正な範囲で算定されるべきです。ご自身で対応することは状況を悪化させる危険があるため、速やかに弁護士へご相談ください。
誓約書の法的効力は、対面での個別具体的な検討が不可欠です
ここまで解説してきたように、不倫に関する誓約書の有効性は、一概に判断できるものではありません。お手元の誓約書が法的にどこまで有効であるかは、書面の文言の一言一句、作成に至った経緯やその際の状況、ご夫婦の婚姻期間や資産状況などを総合的に確認しなければ、正確な法的評価は不可能です。
安易な一般論で自己判断し、法外な請求を行ったり、逆に不当な要求を鵜呑みにしたりすることは、極めて大きなリスクを伴います。
当事務所では、こうした客観的な法的評価を正確に行うため、お電話やオンラインでのご相談は承っておりません。交わされた誓約書が法的に有効か無効かは、記載された文言やサインに至った経緯を個別に評価しなければ判断できないからです。そのため、小倉北区の事務所にご来所いただき、誓約書の現物を対面で慎重に確認させていただくプロセスが不可欠であると考えております。
将来のトラブルを防ぐ、法的に有効な公正証書のメリットで解説しています。
北九州市で不倫の誓約書にお悩みの方は当事務所へご相談ください
不倫の誓約書を巡る問題は、当事者双方にとって精神的な負担が非常に大きいものです。
書かせた側には「法外な内容は無効になり、想定通りの結果が得られないリスク」を、書いた側には「無効になり得るとしても、不貞行為自体の賠償責任は免れない現実」を、私たちは中立的な立場から誠実にお伝えします。
平井・柏﨑法律事務所では、不倫の誓約書に関するご相談について、必ず小倉北区米町の当事務所へ直接ご来所いただき、誓約書の現物を対面で確認させていただいた上で、今後の客観的な法的見通しをご提示いたします。
事務所はJR小倉駅から徒歩5分の場所にございます。北九州市(小倉北区、小倉南区、八幡西区、八幡東区、門司区、戸畑区、若松区)をはじめ、行橋市、中間市など近郊にお住まいで、不倫の誓約書について法的な評価を求められている方は、まずはご来所の予約をお取りください。

平井・柏﨑法律事務所は、北九州市を中心に福岡県内の離婚・男女問題に特化した法律事務所です。
財産分与や慰謝料請求、親権、養育費など、複雑な法律問題を数多く解決してきた豊富な実績とノウハウが強みです。
特に、ご相談者様のお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案することで、不安な気持ちを和らげ、未来へ踏み出すお手伝いをいたします。
また、複数の男女弁護士が在籍しているため、ご希望に応じて話しやすい弁護士が担当することも可能です。
離婚や男女問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせください。
