身に覚えのない不倫慰謝料請求|立証責任と正しい否認方法を北九州の弁護士が解説

身に覚えのない不倫慰謝料請求、その初動対応が重要です

「配偶者と不貞行為に及んだため、慰謝料を支払え」
ある日突然、このような内容が記載された書面が届けば、誰しも冷静ではいられないでしょう。特に、それが全く身に覚えのない事実無根の請求であれば、驚きや怒り、そして深い困惑を覚えるのは当然のことです。

実務上、単なる職場の同僚や友人として親しくしていた関係が、一方の配偶者から「不貞関係」であると誤解され、慰謝料を請求されるトラブルは決して珍しくありません。

しかし、ここで最も注意すべきは、「事実無根なのだから」と安易に対応してしまうことです。身に覚えがないからといって請求を無視したり、その場しのぎで不適切な対応をとったりすると、ご自身の立場を法的に著しく不利な状況へと追い込んでしまう危険性があります。

この記事では、北九州市小倉北区の平井・柏﨑法律事務所の弁護士が、事実無根の不倫慰謝料を請求された際の正しい対処法について、以下の3つの要点を中心に解説します。

  • やってはいけない3つのNG対応
  • 慰謝料請求における「立証責任」の法理
  • 弁護士による適法な否認手続き

不当な請求に対して冷静かつ的確に対応し、ご自身の潔白を法的に主張するための知識をお伝えします。なお、実際に不貞行為の事実があり、内容証明郵便が届いた場合の対応は、こちらの記事で詳しく解説しておりますのでご参照ください。

事実無根の請求に「やってはいけない」3つのNG対応

身に覚えのない請求を受けたとき、一般の方が陥りやすい典型的な失敗例が3つあります。いずれも法的なリスクを伴う対応であり、慎重に避けるべき行動です。専門家の視点から、その理由を具体的に解説します。

NG対応1:請求の完全な無視・放置

「事実ではないのだから、放っておけばいずれ諦めるだろう」と考えるのは、最も危険な判断です。

請求者が送付した内容証明郵便などを無視し続けると、相手方は「反論がない」と判断し、裁判所へ訴訟を提起してくる可能性があります。そして、裁判所から送達された訴状や呼出状までも放置してしまうと、民事訴訟法上の「擬制自白」が成立するおそれがあります。

これは、被告(訴えられた側)が口頭弁論期日に出頭せず、答弁書も提出しない場合、原告(訴えた側)の主張する事実をすべて認めたものとみなす、という法的なルールです。その結果、答弁書の提出や期日への出頭によって反論する機会を利用しないまま、原告の主張を前提とした判決が出され、身に覚えのない慰謝料の支払いを命じられるおそれがあります。判決が確定すれば、給与の差し押さえといった強制執行を受ける可能性も否定できません。事実無根であっても、裁判所からの書類を含む法的な通知を放置することには大きなリスクがあります。

身に覚えのない慰謝料請求の内容証明郵便を前に、深刻な表情で悩む男性。

NG対応2:その場しのぎの安易な謝罪・念書への署名

「面倒なことになった」「早く終わらせたい」という気持ちから、安易な言動をとることも極めて危険です。

例えば、「誤解を招くような行動があった点は申し訳ありませんでした」といった趣旨の謝罪文を書いてしまったり、要求された金額の一部(例えば10万円程度)を支払ってしまったりするケースです。

ご本人にそのつもりがなくても、これらの行為は法的に「不貞行為の事実を認めた」または「債務を承認した」と評価される可能性があります。一度でも不貞の事実を認める言動をとってしまうと、後から「やはり事実無根だった」と主張しても、その説明に慎重な整理が必要となります。それどころか、その謝罪文や振込の事実が「自白の証拠」として利用され、さらなる高額請求の根拠を与えてしまうことにもなりかねません。曖昧な形で示談をすることによる後日の追加請求リスクは、決して軽視できません。

NG対応3:感情的な反論や攻撃

不当な請求に対する怒りから、感情的に反論することも事態を悪化させる一因です。

電話やメールで「そちらこそ不当請求だ」「名誉毀損で訴える」などと相手を攻撃しても、建設的な解決には繋がりません。むしろ相手の感情を逆撫でし、交渉の余地をなくし、紛争を長期化・複雑化させるおそれがあります。

また、反論の内容次第では、ご自身の発言の一部が切り取られ、法的に不利な証拠として利用されるリスクも考えられます。例えば、相手の配偶者とのやり取りの一部を認めるような発言をしてしまえば、それが不貞の推認材料とされる可能性もゼロではありません。重要なのは感情的な応酬ではなく、法的手続きに則り、客観的な事実に基づいて冷静かつ淡々と「事実を否認する」ことです。感情的な行動は、深刻な法的リスクを招くこともあります。

慰謝料請求における「立証責任」の法理とは

では、法的にはどのように考えればよいのでしょうか。ここで重要になるのが「立証責任」という民事訴訟の基本原則です。

不倫(不貞行為)を理由とする慰謝料請求は、法律上「不法行為に基づく損害賠償請求」にあたります。そして、民事裁判の大原則として、権利を主張する側(この場合は慰謝料を請求する側)が、その権利の発生原因となる事実を客観的な証拠によって証明する責任を負います。

つまり、請求者側が、「あなたと自分の配偶者との間に肉体関係(不貞行為)があったこと」を、客観的な証拠をもって裁判官に証明しなければならないのです。

この原則から、請求された側であるあなたが、直ちに「不貞行為をしていないこと」を積極的に証明する義務を負うわけではありません。「ないことの証明(悪魔の証明)」は極めて困難だからです。

ただし、これは「何もしなくてよい」という意味では決してありません。相手方が提示してくる証拠に対して、その証拠が不貞行為を証明するものではないことを法的に的確に反論していく必要があります。相手がどのような証拠を持っていると主張しているのかを見極め、冷静に対応することが不可欠です。より詳しい解説は、不倫の証拠として法的に弱いものをご覧ください。

参照:民事訴訟法

不倫慰謝料請求における立証責任の所在を図解。請求する側が不貞行為の証拠を出す責任を負い、請求された側は「していない証明」は不要だが反論は必要であることを示している。

身に覚えのない請求への対処法【弁護士が解説するQ&A】

ここでは、ご相談者様からよく寄せられる具体的な質問について、Q&A形式でお答えします。

Q. 職場の同僚の奥様から慰謝料請求されました。誤解なのですが「不倫していない証拠」を出す必要はありますか?

A. 直ちにご自身で「していない証拠」を完璧に揃える法的義務はありません。

前述の通り、民事訴訟の原則として、不貞行為があったことの立証責任は請求する側にあります。したがって、あなたが潔白を証明するために、躍起になって証拠を探し回る必要は、まずありません。

ただし、楽観視は禁物です。相手方は、何らかの事実を誤認し、それを不貞の「強い証拠」だと信じ込んでいる可能性があります。例えば、親密なLINEのやり取りや、二人で食事に行った際の写真などを根拠に、慰謝料を請求してきているのかもしれません。そのため、まずは相手方の主張内容と証拠を正確に把握し、弁護士を通じて適法に「事実を否認する」旨の回答書を送付することが重要です。

Q. 相手がしつこいので、10万円払って念書を書き、終わらせても大丈夫ですか?

A. 法的リスクが大きいため、慎重に判断してください。

その場しのぎで金銭を支払ったり、念書を交わしたりする行為は、法的に「不貞の事実を認めた(自白した)」と評価されるリスクが極めて高いです。ご自身の潔白を信じているにもかかわらず、不貞を認めたかのように評価される資料を残してしまうおそれがあります。

一度このような対応をとってしまうと、相手方はそれを根拠に「やはり不貞は事実だった」と主張を強め、後日さらに高額な追加請求をしてくる口実を与えかねません。紛争を早期に終結させたいというお気持ちは理解できますが、ご自身だけで示談を判断する前に、まずは専門家である弁護士にご相談ください。

北九州で事実無根の慰謝料請求にお悩みの方へ

事実無根の請求に対して適法な防御を行うためには、感情的な対応を避け、立証責任の原則に基づき、冷静に手続きを進めることが不可欠です。相手がどのような根拠で請求してきているのかを法的に分析し、ご自身の言動が不利な証拠とならないよう、慎重な対応が求められます。

安易な自己判断は、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。ご自身の正当な権利を守るためにも、早い段階で弁護士に相談し、法的な見通しや適切な対応についてアドバイスを受けることを強くお勧めします。当事務所の弁護士料金についても、ウェブサイトでご確認いただけます。

適正な解決のため、ご来所での対面相談を徹底しています

当事務所では、事案全体を確認し、適切な解決方針を検討するため、お電話やオンラインでのご相談は原則として承っておりません。

その理由は、事実無根の請求に対する法的評価は、お手元の資料を拝見せずに行うことが極めて困難だからです。「相手方がどのような誤解(証拠)に基づいて請求してきているのか」「それに対してどのように客観的な反論すべきか」といった核心部分の判断は、届いた内容証明郵便やご自身のスマートフォンに残るやり取りなどの資料を弁護士が直接拝見し、事実関係を対面で慎重に確認するプロセスが不可欠です。

まずは北九州市小倉北区の当事務所へご来所いただき、事実関係を丁寧にお聞かせください。それが、客観的な法的見通しをご提示し、適正な解決へ向けた第一歩となります。行橋市や中間市など、近隣地域にお住まいの方からのご相談も多数お受けしております。一人で悩まず、まずはご相談のご予約をお願いいたします。

 

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